取り留めもない

映画や舞台の感想書いたり、たまに日記も

映画『ほつれる』

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STORY 

綿子と夫・文則の関係は冷め切っていた。綿子は友人の紹介で知り合った木村とも頻繁に会うようになっていたが、ある時木村は綿子の目の前で事故に遭い、帰らぬ人となってしまう。心の支えとなっていた木村の死を受け入れることができないまま、変わらない日常を過ごす綿子。夫と周囲の人との関係に揺れ動く心を抱える綿子は、木村との思い出の地をたどる…。

ほつれる|デジタル映画鑑賞券【ムビチケ】

REVIEW 

先日の『いつぞやは』が嫌な奴出現数でいったら抑えめだったのでこっちを観て「これこれ」となった。加藤拓也はこういうことだよな。そんな人がどれだけいるのかわからないけど、たまたま観て落ち込む感じ。

不倫というしょうもない関係の中、不倫相手の死によってこの関係が最高に美化されてしまった状況。いなくなってしまった人間のことは嫌いになることはない。さらには自分のせいで死んでしまったのかもしれないというおまけ付き。人間はこういうものにカタルシスを感じがちで本当にきもい。それ以前に、好きでもない、でも別れもしないという存在が家にいること、たまに楽しく食事をするふりをすること、そんな夫婦関係を続けていること、全部がきもいんだよな。不倫よりも気持ち悪いかもしれない。

なんかそんなこと言ってたら、自分がかなり潔癖であることを思い出してしまった。だから人間関係が苦手なことも。

映画『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』

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STORY

呪われた廃墟で撮影された投稿映像。そこには、不気味な祭壇と全身血まみれの赤い女、そして謎の赤ん坊の泣き声が収められていた。粗暴なプロデューサー・工藤とディレクターの市川、カメラマンの田代による「コワすぎ!」チームは、怪異を解き明かすべく取材に乗り出すが……。

戦慄怪奇ワールド コワすぎ! : 作品情報 - 映画.com

REVIEW

まあとにかく観てください。話はその後です。

一応自分用に感想を残すとすると、開始10分でノリにさえついて行ければ多分初見で観るのが一番良いんじゃないかなぁってこと。私自身もコワすぎシリーズを何一つ観てなかったし、レンタルDVDショップに並んでる段階ではどの程度怖いのか分からずに一生観なかったと思う。今年の私が公開されるJホラーを全部観る!という意気込みだったから観ただけで、完全に偶然の産物です。

で、なんで初見の方が良いと思ったかというと、割とこれがコワすぎシリーズの集大成で、過去作のリバイバル的な側面があると言っていた人がちらほらいて、ならまあ良かったくらいな感じです。過去作はいつ観るかわからないけど、「口裂け女」「トイレの花子さん」「カッパ」「最終章」は観たいかもと思ってます。

それにしても、映画が終わってあんなに微笑ましい空気になってたの意味わかんなくて最高だった。

映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』

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STORY 

周囲の空気ばかり読んでしまう優等生の茜と、自由奔放で絵を描くことを愛する銀髪のクラスメイト・青磁。茜は何もかもが自分とは正反対の青磁のことを苦手に思っていたが、青磁が描く絵と、そのまっすぐな性格にひかれ、2人は少しずつ距離を縮めていく。やがて、そんな2人の過去が重なりあい、これまで誰にも言えなかった思いがあふれ出す。

夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく : 作品情報 - 映画.com

REVIEW 

映像が美しい映画でしたね。さすが酒井麻衣監督作品という感じ。とはいえ今作についてはそれ以上の感想がほぼなく、話も特段面白くないから、退屈でした。この時代に病弱な登場人物が元気づけてくれた女の子が、どうしようもなくつまんない奴になってたのに、ずっと想い続けてるなんて設定しょうもなくないですか?同監督作品でいうと『美しい彼』はキャラクターが愛おしく思えるほど不器用で、そこから生まれる物語が面白かったんですけど、そういうのは特に感じませんでした。お前はターゲットじゃないと言われればそうなので私が悪いです。

『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』で一番気になったのは結局「タイトルの漢字と開いている文字はどんな基準で選ばれてるのか」ってことですね。

映画『オオカミの家』

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STORY 

美しい山に囲まれたチリ南部で、「助けあって幸せに」をモットーに掲げて暮らすドイツ人集落。動物が大好きな少女マリアは、ブタを逃してしまったために厳しい罰を受け、耐えきれず集落から脱走する。森の中の一軒家に逃げ込んだ彼女は、そこで出会った2匹の子ブタにペドロとアナと名づけて世話をするが、やがて森の奥からマリアを探すオオカミの声が聞こえてくる。マリアがおびえていると子ブタは恐ろしい姿に変わり、家は悪夢のような世界と化す。

オオカミの家 : 作品情報 - 映画.com

REVIEW

なんかすごい映像だった。ストップモーションの作品とはいえ、かわいいとかほっこりとかいう要素がなく、ヤンシュヴァンクマイエルみたいな感じなんだけどずっとテンションが低い。同じテンションで続いて行くので若干の眠さも感じる。それよりも「どうやって撮ってるんだろ」という気持ちが勝って結局引き込まれてしまう。

この話をより理解したいのであれば予習は必須だと思う。ファウンドフッテージものということで背景のなんとなくの説明をされるけど、それも本当に断片的なので。だからと言って、予習をしたからよくわかるという話でもない。この世界にどの程度自分の世界とのつながりを感じるかが重要だと思う。例えば、統一教会の話とか、ジャニー喜多川の話とか、広く言えば同じこと。良くない環境と分かりつつ、そこで享受できる喜びにばかり目を向けて、結局とどまってしまうこわさ。今のところ自分はそういう状況になったことはないけど、家族単位でもあることだと思う。

余談だけど、作者からのコメント動画が映画の内容に反してほっこりしたから観てほしい。コーヒーマグを持ってるところからして良い。

シス・カンパニー公演『いつぞやは』

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STORY

かつて一緒に活動していた劇団仲間のところに、一人の男が訪ねてきた。
故郷に帰る前に顔を見にやって来たというのだが、淡々と語り出した彼の近況は……。

いつぞやは | シス・カンパニー | SIS company inc.

REVIEW 

岸田國士戯曲賞を受賞した加藤拓也と窪田正孝の組み合わせということでチケットを取ったものの、窪田くんの代演で平原テツさんとなった今作。久々の加藤拓也の戯曲でヒリつくだろうなと思っていたけど、そんな色々が重なっていっそうグッとくる作品に感じた。

物語が描くのは端的に言えば男の人生で、特別ドラマチックでもないけど、普通でもない世界。死ぬまでの間にそこまでたくさんの人と関わってきたわけじゃなさそうだけど、それでも自分を吐露できる友人たちがいて、最後に一緒にいてくれる家族がいて。やりたいこともまだまだたくさんあっただろうけど、全うできたのかもしれないとなんとなく感じられるクライマックス。『いつぞやは』というタイトルから感じる過去への明るい想いがじんときた。加藤拓也の戯曲なのに嫌なやつが出てこない、と終わった瞬間思ったほどさっぱりしていた。これがシス・カンパニーのプロデュース作品ということなのか?しらんけど。嫌なやつは出ないけど、この日本を舞台に主題ではないところで大麻ナチュラルに出てくる世界はかなり若いなと思ったし、そこはらしいなと感じました。

窪田正孝主演で見たくなかったとは言えないけど、平原テツさんの佇まいにかなりやられてしまったのでこの布陣で見られて良かった。うん。

めちゃくちゃ余談だけど、加藤拓也って10億円の山内仁平に似てる。

映画『スイート・マイホーム』

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STORY

スポーツインストラクターの清沢賢二は、愛する妻と幼い娘のために念願の一軒家を購入する。地下の巨大な暖房設備により、家全体を温めるその家は、「まほうの家」の呼び名の通り、冬は寒冷な長野県では理想的な物件だった。マイホームでの幸せな生活をスタートさせた清沢一家だったが、その幸せはある不可解な出来事をきっかけに恐怖へと転じていく。

スイート・マイホーム : 作品情報 - 映画.com

REVIEW

なんか見るつもりはなかったんだけど、『いつぞやは』で窪田正孝を見られなかったということと、思ったよりもホラーみが強いという触れ込みで見に行ってきた。

面白かった〜!映画が好きという静かな熱い思いを感じる俳優の齊藤工が職業監督の作品と遜色ない、というかそれ以上の作品を作っていた。ホラー的な不穏な雰囲気を使いながら、実際は人間の狂いをうまく表現していた。特に子供たちの演技が妙に合っていて好きでした。一方の大人たちは割と大袈裟な演技が多くて、若干食傷気味になったけど、それもそれでホラーっぽいといえばそんな気もする。

ただ、そもそもの物語自体にそんなに面白味を感じないから両手をあげて面白かったとはならなくてそこは残念だった。でも最初からわかっていたことなのでそこはまあ。

見終わった瞬間に思ったのは、独身貴族の齊藤工が幸せな結婚をした窪田正孝にこの役をやらせてるのおもろ、ということでした。

 

映画『ファルコン・レイク』

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STORY

もうすぐ14歳になるバスティアンは母の親友ルイーズのもとで夏を過ごすため、家族4人でケベックの湖畔にあるコテージへやって来る。ルイーズの娘である16歳のクロエと出会ったバスティアンは、大人びた雰囲気の彼女に恋心を抱く。クロエの気を引くため、幽霊が出るという湖へ泳ぎに行くバスティアンだったが……。

ファルコン・レイク : 作品情報 - 映画.com

REVIEW

ここ最近で一番心がざわついた作品だった。恋の物語だと思っていたし、成長物語だと思っていたのに世界はもっと残酷だった。

冒頭から「性愛」と「幽霊」の雰囲気が漂っていて、なんだか居心地が悪いような気持ちで始まって、それがずっと続いて行く。10代の男女であれば女の子の方がそもそもが大人びているにも関わらず、さらに年上の存在が少年の世界をどんどん変えていく。「好き」という感覚よりも「興味」が優っているところが、この世代の関係性ではポイントだなと思う。一方で思春期の女の子は肉的なつながりよりも精神的なつながりを求めている。そんな2人が出会って交流していく生々しさがとてもヒリヒリする。きっとこの男女の違いは露骨でないにしろ大人になっても続いている気がする。

2人の感情や行動の理由を明確にすることはあまり意味がない。ただ、起きてしまったことを辿って行くことだけでもこんなにつらいなんて。いくらどんな思い出があろうとも死んでしまったらなにもない。どれだけ後悔しようとももうどうすることもできない。生きてさえすればやり直せることも断ち切られてしまった。この余韻に心を抉られた。

『A GHOST STORY』を思い出すような鑑賞後感が個人的にはかなり刺さった。未来に取り残されて行く感覚は死を考えるのと同じだと思う。