取り留めもない

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映画『ファルコン・レイク』

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STORY

もうすぐ14歳になるバスティアンは母の親友ルイーズのもとで夏を過ごすため、家族4人でケベックの湖畔にあるコテージへやって来る。ルイーズの娘である16歳のクロエと出会ったバスティアンは、大人びた雰囲気の彼女に恋心を抱く。クロエの気を引くため、幽霊が出るという湖へ泳ぎに行くバスティアンだったが……。

ファルコン・レイク : 作品情報 - 映画.com

REVIEW

ここ最近で一番心がざわついた作品だった。恋の物語だと思っていたし、成長物語だと思っていたのに世界はもっと残酷だった。

冒頭から「性愛」と「幽霊」の雰囲気が漂っていて、なんだか居心地が悪いような気持ちで始まって、それがずっと続いて行く。10代の男女であれば女の子の方がそもそもが大人びているにも関わらず、さらに年上の存在が少年の世界をどんどん変えていく。「好き」という感覚よりも「興味」が優っているところが、この世代の関係性ではポイントだなと思う。一方で思春期の女の子は肉的なつながりよりも精神的なつながりを求めている。そんな2人が出会って交流していく生々しさがとてもヒリヒリする。きっとこの男女の違いは露骨でないにしろ大人になっても続いている気がする。

2人の感情や行動の理由を明確にすることはあまり意味がない。ただ、起きてしまったことを辿って行くことだけでもこんなにつらいなんて。いくらどんな思い出があろうとも死んでしまったらなにもない。どれだけ後悔しようとももうどうすることもできない。生きてさえすればやり直せることも断ち切られてしまった。この余韻に心を抉られた。

『A GHOST STORY』を思い出すような鑑賞後感が個人的にはかなり刺さった。未来に取り残されて行く感覚は死を考えるのと同じだと思う。