取り留めもない

映画や舞台の感想書いたり、たまに日記も

SARUGAKUCOMPANY 『二度と燃えぬ火』

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【脚本】二度と燃えぬ火

【作】ジャン・ジャック・ベルナール

【翻訳】梅田晴夫

【構成・演出】札内幸太

【出演】大門嵩 巽よしこ 藤原季節 中野麻衣 地曵豪

 目的は藤原季節くんの舞台演技を観るためでした。いくつかの映像作品を観て、自分自身の考えを素直に言葉にできる彼が小規模な作品に制作から関わっていると聞いたら、それは気になる。度胸がある子だなと思ってはいたけど、それはどれほどのもので、そうしてどんな訳があってそうしているのか、何かわかる気がした。そんな理由でチケットを取った。

STORY

1918年10月のあるフランスの小さな町の教授アンドレ・メランの家。妻ブランシュ・メランは戦争に出た夫アンドレが捕虜になり3ヶ月音信不通のまま、あるかわからない夫の帰りを待ち続けていた。夫が不在の中、町に援助に来ていたアメリカの士官の一人をブランシュはお世話することになる。戦争が終わりアメリカ兵たちが町を去るこの日、ブランシュは叶わぬ夢を描く。そんな時、来るかわからなかったもう一つの夢が

 

人と人の間に起こる些細なすれ違いが、

そこにあるはずだった幸せな日々を二度と取り戻せないものに変えていく…

 

1920年代フランス戯曲ジャン・ジャック・ベルナール作「二度と燃えぬ火」上演決定!サルガクカンパニー第一回公演「二度と燃えぬ火」 - Astage-アステージ-

 

REVIEW

物語としては、戦争のせいで長い間離れていたある夫婦が、夫が戻ってきたことで、はじめは二人で一緒に居られるだけで幸せだったのに、そのうちに夫は妻の不義を疑い、妻は夫の自分への不信を嘆き、心が離れていくというもの。互いに思う気持ちが強いのに、離れていた長い時間のせいなのか、その気持ちを思いやりをもって表現することができなくなった二人。夫は妻を疑うことで妻の愛を試し、妻は夫を思うからこそ離れたいと望んでしまう。別れを目の前にした夫婦を引き留める夫の父は、「十分不幸を味わった。今は幸せなんだよ」と二人に語りかける。自分たちにとって再び離れ離れになることは何を意味することなのか、もう一度考えた時に残ったものが結局のところ「愛」だったんだと思う。幼稚な感想だけど、とても大人でなければ考えつかない物語だと思ったし、果たしてどれだけの人がこの感情に出会えるのか私にはわからない。おそらく、これほど自分以外の誰かのことを考えたり、その相手のために悩んだり、傷ついたりすることは今までもないし、これからもない私には一生無縁だろう。それに、そういうことを目の前にしたら、私ならば一目散に逃げ出してしまう。なぜなら、その方が楽だから。人間根詰めて誰かのことを考えると、自分も相手も追い詰めてしまう。100%の愛情がいかに脆いものなのかということを考えさせられた。

観劇したBキャストではアンドレを地曵豪さん、アンドレの父を藤原季節くんが演じていた。もうそれだけでちょっと意外というか、アンドレの父は75歳で、それを地曵さんの半分ぐらいの年の季節くんがやるってどうなんだろうと思ったけど、やっぱり不思議なくらい肝が据わっていた。小難しい雰囲気になってきたときに、緩衝材としても機能していた。一体彼はどんな23年間を送ってきたのだろう。そしてどうなっていくのだろう。演技が上手い下手とかではなく、単純に彼がどう志向してどう行動していくのか、それによってどんな評価を受けるのか、そういうことが気になった。今後もこのプロジェクトは続いていくようだし、それに彼も関わっていくみたいだし、楽しみではあるけど、この事務所だからできること(意味としては許されること)なんだろう。~だろうばっかりになってしまったけど、彼にはこっち側にもあっち側にも行ってほしくなくて、でもこっち側でもあっち側でも見てみたい。自分でもうまく言えないのだけど、とにかく私自身がめちゃくちゃに憧れる存在になってほしい。そんな生き方してみたいと思わせてほしい。そんな感じなことをずっと考えている。

 

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