取り留めもない

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私はウル・デリコがこわい

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グランギニョル』の開幕まで1週間を切り楽しみで仕方がない。今まで真面目にTRUMPシリーズのことを書いてないなと思ったので、個人的な所感をつらつらと書いておこうと思う。ネタバレするけど、全容が分かるようにはしないので『TRUMP』を観た人が分かるレベルの内容です。

 

私はウル・デリコがこわい。

2015年の高杉真宙くんが演じたウルを観た時からこの気持を強くしていた。ウルはエリートな血筋にも関わらず、吸血種と人間の間に生まれた「ダンピール」である。彼はその事実と虚構に苛まれながらずっと一人で生きてきた。そんな中、クランで出会ったダンピールのソフィに自分を重ね近づきたいと願うのに、ソフィと彼の間には決定的な違いがある。そんなかわいそうなキャラクターである、というのが一般的な見え方だと思う。自分の哀しさを嘆き、目の前の欲望に飛びついてしまう。その悲哀を見て私達も悲しみを分かち合う。D2版の『TRUMP』を観ていた段階では私もそう思っていた。

でも、高杉真宙という俳優が演じたウルはとても器用に生きていた。

そこに恐怖を感じた。

ウルのソフィと他の生徒に対する二面性は明らかだった。いわゆる学級委員長的な場のつなぎ方をし、信用してほしい人物にだけ本音を打ち明けているように振る舞う。オオカミ少年のような立ち振舞を身に着けた彼は、果たしてどれが本当の気持ちなのか分かっていたのだろうか。もう、自分の本当の気持ちというものがどこにあるのか 、そんなものがあるのか、最後はそこまで疑いかねない精神状態だったのではないかと、私は考えることになった。

ここからは私の想像でしかないが、ウルは純血種に対する圧倒的な劣位を感じていたのではないかと思う。そしてソフィに出会うまで、その苦しみの乗り越えるために時に真っ当な生き方から外れるような行いもしかねなかったのではないかと。兄であるラファエロはそのウルの蛮行を必死に隠してきた。彼にはそうすることしか弟を助ける方法がなかったから。なのに、ウルが心を開いたのはソフィだった。いや、ウルは心を開いたのではなくソフィになろうとしたのではないかと思う。ウルが失ってしまった孤高の美しさを持つソフィに。まあ、ソフィも『LILIUM』で同じ道を辿ってしまうのだけれど。

以上の理由で私はウルがこわい。でも同時に愛おしくて仕方がない。