取り留めもない

映画や舞台の感想書いたり、たまに日記も

映画『グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル』

 

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REVIEW

グザヴィエ・ドランの世界は私の世界ではない。彼のように鮮やかで激しくてドラマチックな世界を私は生きていない。地味で、平坦で、みっともないと泣くことすらない、そんな世界が私の世界。だからこそ、ドランが描く世界の美しさに感動する。私が知らない人間の美しさや汚さ、愛おしさをスクリーンを通して知る。

役者をやりたくて映画を撮った。そんな彼は夢を叶え、さらにその作品でカンヌを取った。個人的に、アカデミー賞よりも価値があると思う。彼の多様性を皆が愛したのだ。彼は「もし自分が演じるとしたら」という視点で演出すると言った。例えそれが5歳の子供でも、老婆でも変わらないという。自分より長く演技で生活している役者たちを前に、役者としての感覚で対話をしていると言い切った彼は、やはり傲慢で自意識が高いように見えるかもしれない。でも、それしか知らないのだからどうしろというのだろう。独学で映画を撮り始めた彼だからこそ、自身を持ってそう断言できるのだろう。

彼が音楽を使って作品のイメージを直感的に周りと共有しているというくだりが一番興味深かった。その日の観客は、純粋にグザヴィエ・ドランを好きな人とアーティストっぽい人に二分されてたけど、隣が多分後者寄りの人で、時折前のめりになって画面を見つめていた。こうやって、いろんな人の影響を受けながらアーティストたちはまた私達観客に新たな世界を見せてくれるのだなと思った。

時々思う。私がそっち側の人間だったらと。憧れるばかりではなく、求められる人間だったらと。でも、きっとそんなこと言っているうちはなにも変わらないんだ。

 

参考記事

 www.cinemacafe.net

realsound.jp

natalie.mu