取り留めもない

映画や舞台の感想書いたり、たまに日記も

劇団競泳水着リーディング部『ある盗聴』

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STORY

主人が死んだ。
恐らく、私が殺した。
そのことは誰にも気づかれずに、通夜と葬式がとりおこなわれた後で、
手紙と一本のCD-Rが届いた。
CD-Rには、生前の夫と私の会話が録音されていた。
自宅は盗聴されていたのだ。
「貴女は悪くない」
手紙にはそう書かれていた。
この男は全部わかっている、と思った。
顔も正体もわからない男と、盗聴器を通した奇妙な交流が始まる。
やがて新しい男が現れて、私に言い寄る。
盗聴男からの指示は、
「その男を、自宅に連れて来て下さい」
私は、セックスを、盗聴器の向こうで聞き耳をたてているだろう男に、聴かせることになるが……。

劇団競泳水着 | 次回公演

REVIEW

柿喰う客の加藤ひろたかさんのツイートを見て一週間前にチケットを取った。完全に衝動的な行動だった。初めての場所。池袋の東口で働いていたことはあるのに西口にはほとんど来たことがなかった。そのスタジオはこんなところにあるのかという場所にあった。

席に置いてあったチラシには「朗読劇を前提とした台本」と書いてあった。私が今まで観てきた作品にそれと同様のものはなかった。そうして静かに始まり、役者たちからぽつりぽつりと溢れ出てくる台詞。必要最低限の掛け合い。登場人物の感情の交差というのではなく、独白の体をとって寧ろ一方的な感じがすることが心地よかった。誰かが生まれたり死んだりすることは、人生の中で最も大きなイベントのひとつである。けれど、『ある盗聴』では夫の死を淡々と、それ以外の出来事は感情的に表現していて、その奇妙なムラがいっそう人間らしく見せていた。

村上慶子(主人公)という人は、いろんな人に愛されていた人。ただ慶子を含めた皆、愛情の表現が下手で、不器用だった。慶子は夫を殺すほど、夫を愛していて、夫の村上明はのはうまく伝えられない愛を他愛人に向けてみることで、本当の愛に気がついて、それは明の愛人の紗良も同じ。うまく伝えられない気持ちを何かに託している。いや、この際愛情かどうかは関係がない。というか、わからない。誰かを強く想う気持ちで、他人は喜ぶことも悲しむこともある。ひとつの出来事で、皆が一様に同じことを思うはずはないのだから。そんな当たり前のことをじんわりと感じることができる作品だった。

加藤ひろたかさんは柿フェスの『フランダースの負け犬』以来だった。台詞といえど、佇まいに相反する言葉を繰り出してくるイメージがすっかりついているので、自然と不安になるというか、つい次の言葉を待ってどきどきしてしまう。上映中も、静かな雰囲気を打破する言葉を発するたびに「サイコパスギャグ」という言葉を思い出してしまった。あくまで良い意味で、神経質そうな人が、狂った言動をするのがツボなのかもしれない。次回出演作品からも一般人への牽制をひしひしと感じる。

魔法処女★えるざ(30) / 劇団だるめしあん