取り留めもない

映画や舞台の感想書いたり、たまに日記も

柿喰う客フェスティバル2017『流血サーカス』

 あらすじ

飢えた兄妹は人さらいの口車に上手く乗せられ、兄はサーカス、妹はお金持ちの家に売られてしまう。再会を誓い合う二人。兄は見世物女にサーカスで生き抜く術を教わる一方で、妹は金持ちの家で何不自由なく暮らしていた。そんな兄妹が再び出会う時、物語は思いがけない方向へ転がっていく…

感想

『流血サーカス』というタイトル通り、みんな求めていたことを見透かすように眼前に広がるのは血の海。とはいっても、舞台上で行われることなのだから大したことはないと思うやも知れない。でもそこは柿喰う客。演劇の境界を越えて、眉間にナイフを突き立てられる恐怖を味わうことになる。いわゆる「第四の壁」的なことというよりも、実は舞台上よりも客席(現実)で起きることのほうが奇妙で、恐ろしくて、不可解で危険なのだと。そういう演劇の不思議な用法を感じた。圧倒的な「虚」の世界だから、はじめはなかなか入り込みづらいし、柿喰う客らしさのない演者が多かったこともあって勿体無いなと思うところもあったけど、フェスティバルならではのお祭り感とチャレンジングな意気込みは十分に感じられた。

SNSを見る限りいろんな人の感想にもあったけどふしだらな女を演じていた加藤ひろたかくんがとても良かった。去年加入したばかりというのに、柿のエッセンス+彼のセンスが溢れ出していて、ボインボインと言う度に本当にゆさゆさ揺れる胸が見えた気がする。なんであれを美しいと思ったのか、自分でも謎。

 あと今回柿に加入したメンバーで『流血サーカス』出演者の中では守谷勇人くん(デスノートリュークみたいな人)が良かった。

 で、プロフィール観てみたら『デスノート』出てたらしい。

精悍な顔立ちから繰り出される切れ味のある芝居が魅力。2014年、劇団「ワハハ本舗」公演でデビュー。退団後の主な出演作はNTV『デスノート』、NHKとと姉ちゃん』など。特技は和太鼓。 

http://kaki-kuu-kyaku.com/member_moriya.html

 アドリブの調子がいい人だ~~~と思ったらワハハ本舗からデビューしたって。そりゃ相性いいわとウエメセ気味に思った。良くも悪くもコント的なノリとシリアスが相まみれた柿喰う客の作品の中で輝くって難しいなと思ってて、演技してます!!!という一生懸命な感じが見えると台無しになる。虚構でしかない世界だからこそ、生き物としては正しく機能してそこにいないと整合性が取れないのかななんて。

全体的に予定調和が壊れる瞬間がもっとたくさんあるともっともっと面白くなると思った。