舞台『アヒルと鴨のコインロッカー』

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STORY

「ずっと誰かが来るのを待ってたんだ」

引っ越してきたばかりの大学生・椎名は隣人の河崎と名乗る男にいきなり本屋強盗に誘われる。
ひきこもりがちな外国人のドルジ、ペットショップを経営する麗子、
そして二年前に同じアパートに住んでいたという琴美……
彼等の奇妙な関係と隠された謎が明らかになる時、過去からつながる物語は終幕へと向かう。

舞台『アヒルと鴨のコインロッカー』

REVIEW

映画『アヒルと鴨のコインロッカー』を観たのは単純にキャスト目当てだった気がする。

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そのときもめちゃくちゃ泣いた。今回も泣いた。勝手な想像だけど、舞台を観る人のほとんどが映画か、本を読んでいるんじゃないかと思う。ちなみに私は本は読んでいない。だから、原作でこの叙述トリックをどんな風に表現したのかわからない。だから、果たして舞台で表現できるのだろうかと思った。そんな心配は杞憂だったわけだが。

映画と話に大きな違いはなかったけど、舞台の方が病気や人種についての「差別」や、ドルジと琴美と河崎の「友情」にフォーカスしていたなと思う。それ以外にも、取り上げて面白いところはいくつもあるのだけど、そういう意味では「アヒルと鴨」に忠実だなと。

映画を観ている時は、「松田龍平を演じる瑛太」にドキドキしていた節があったから、キャスティングに対してフラットな状態で観られて良かった。あと、映画はあえてふわっと静かな雰囲気だった。その雰囲気の中で、ドラマティックな物語が展開していくのが面白かった。舞台はどちからというとシリアス&コメディでメリハリがあって、内容を知っているからこそ冗長に感じがちな回想部分も、トントン進んでいった。

人生って本当に一瞬。それぞれ一生懸命生きていても、次の瞬間に何が起きるかは誰もわからない。だからどうしろとかこうしろとか言わないところがこの話の素敵なところだと思った。

主演の多田さんはここ最近ナミヤ雑貨店の奇蹟』『天球儀』と立て続けに観ている気がする。私が舞台にハマる前に想像していた「舞台の人」はこういうイメージだった。それは今も変わらない。役としてのイメージがちゃんとありつつ、自分自身の魅力や個性が出ている。そんな俳優さん。細貝圭さんも割と見ている方。今回の劇場のステージに、細貝さんが立つと、めちゃくちゃ狭そうだなって思った。山田ジェームス武さんは、『セブンデイズ』で観たけど、やっぱり映像と舞台じゃ雰囲気違う。こんなに愛くるしいキャラクターの人だとは思ってなかった。あとは、渡邊りょうさんはつい先日悪い芝居の『メロメロたち』で観たばかり。関西の人だからなのか、山浦さんみたいに飄々とした人だなというイメージがある。みんな、何かで観ている人たちばかりだったけど、カテコで細貝さんが言っていた通り、集まってみれば新鮮な組み合わせばかりで、不思議な感じがした。そもそも、今回の主催が文化庁の機関というのも面白い。

文化庁委託事業 平成28年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業
日本の演劇人を育てるプロジェクト 新進演劇人育成公演 演出家部門

舞台芸術分野の優れた新進演劇人で発表の機会に恵まれない者に、発表の機会を提供することにより、新進芸術家の育成を図る事業です。

『アヒルと鴨のコインロッカー』

別に良いのだけど、この原作をこの演出家でとこの制作で、この俳優たちを使いながらやるにも関わらず、「舞台芸術分野の優れた新進演劇人で発表の機会に恵まれない者に、発表の機会を提供する」とか言われると、本当に「若い」人は太刀打ちできないよな。それだけ、年長者と権力者の多い業界なのかな、演劇界は。分からないけど、そんなことを思ったりした『アヒルと鴨のコインロッカー』でした。

 

原作伊坂幸太郎(創元推理文庫刊)

脚本・演出:ほさかよう

出演

多田直人 清水由紀 細貝圭 山田ジェームス武

実川貴美子 馬渕史香 渡邊りょう 免出知之 土井玲奈 首藤健祐