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舞台『たかが世界の終わり』by第7世代実験室

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REVIEW

自分がこの作品について知っているのは、グザヴィエ・ドランが映画化したフランスの戯曲ということと、今回は藤原季節くんが家に帰ってくるルイを演じるということの2点。直前のYoutube配信で、蜷川幸雄さんの元で演劇を学んだ人たちが立ち上げている企画と知った。ということはきっと理解するのに骨の折れることだろうと不安になった。

 

配信とは言え、すでにワンカットで撮影したものを送り出すのだから、演劇というよりは映画に近い体験のように感じるというのがまず思ったことで、その後にやっぱり劇場で観たかったと痛感した。演者たちの熱も、作品が持つ複雑な感情も素晴らしかったのに、唯一自分の集中力が足りていない。それが自分のただでさえない理解力を更に損なわせた。と同時に、やはり映像での演技と舞台の演技は違うし、会話劇だとなおさらなのかもしれないと思った。その点、ドランの作品の方がわかりやすく再構成されていたし、映画なので私はそちらから得たものの方が多かった。 

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愛されたい、という欲求よりも、理解したいのにできない、という三者三様の苦しみがドンっと自分にのしかかるようなそんな作品だった。家族の中にも緊張感もあるし、ある種の嘘っぽさもあって、なんとかそれらを取っ払って話をしようとするのだけど、みなベクトルが違う方向を向いていてどうにもならない。分かってほしくて言葉を使うのに、分かってあげる為に聴覚を使えない。諦めてしまえばそこで終わりだと知っているから頑張ってみるけれどもうだめなのだということも知っている。ルイはもうこの家を出るしかない。進んでいくしかない。いろんなことを忘れながら。

 

今回の作品で得たものはたくさんある。一つは藤原季節くんの演技。役に没入するきらいがある彼の演じるルイは、自分の中の感情に戸惑いながら、家族と対話し、最終的に自分に帰着する様は愚かだけれど懸命にもがいて理想を求めている男のように思えた。彼に苦悩する人間を演じさせたら、同世代の俳優の中でも群を抜くと思っている。まさにそれだった。

 

今まで観た作品 

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ここにないけど、『貴方なら生き残れるわ』も彩の国さいたま芸術劇場だったし、自粛前に最後に観た上記の『誰にも知られず死ぬ朝』もそうでした。藤原季節の演技を観に与野本町に行く生活に戻りたい。

 

話を戻して、ドランの映画だから強調されてたのかと思ってた役が母親と男兄弟なのですが、今作でもこの2役やっぱり鍵になる存在だった。銀粉蝶さんの演じる母親はなんていうかフランス人らしさがあるというか、大きい愛の器の中に毒も混じっていて、それでいて女性という雰囲気がとても良かった。確かにあの母に愛されたとしても、あまりに大きな愛の所為で疑ってしまうというか、そういう違和感が生まれそうだなと思った。

 

一方で、内田健司さんの演じるアントワーヌ(ルイの弟)はとても日本人的な執拗さを感じた。爪の間に挟まったとげずっと気にしているようなそういう雰囲気。気にしなければ何事もなく生きているのに、一度気にしてしまったら手が付けられないというような怒り。怒りじゃないかもな。自己嫌悪。この状況を作ってしまった自分に対する嫌悪を感じた。ルイのことは突き飛ばしても全力では殴らないのに、代わりに自分の太腿をつねってそう。全然関係ないけど、アントワーヌとして知ってしまったからすごくイラチなイメージなのに、本人はとても線が細そうな美丈夫。美しい。*1

 

権利の関係上アーカイブもないし、11月1日の21時からの上演が最後になってしまいそうですが、ご興味ある方はぜひ。

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