スケートボード映画1本目。ただの若者たちの青春物語かと思ったら大間違い。ラストベルトという捨てられた工業地帯で生まれ育った少年たちが大人になっていく物語で、その裏には大きな括りで「暴力」が潜んでいる。鬱屈とした思いを抱えながらも、スケートボードと仲間たちに助けられながらなんとか生きているザック、キアー、ビンはそれぞれの方法で成長し、そして仲間たちと過ごした場所から別の場所に、前に向かって進んでいく。フィクションのように事故だとか、死だとかそういう劇的なドラマは起きない。ただ、思うようには進まない。それは映画を観ている人にとっても。
閑話。ここ最近、動画配信サイトではドキュメンタリーばかり観ている。出来不出来はあるけれど、どれもフィクションにはない不条理と整合性があって、常に心を揺さぶられる。この作品に近いのはviceのパトリック・オーデル(Patrick O’Dell)が綴るスケートボーダーのドキュメントシリーズ『Epicly Later’d』じゃないかなと思う。Huluで観られます。これで取り上げられるのは一時代を築いたスケーターたちだけど、みんなそれぞれいろんな問題を抱えて、いるけれどそのあれこれをスケートボードで昇華していたんだなと感じさせられる。
閑話休題。私は、子供ができてなんとかちゃんと生きようとしたけど、仕事も家族との生活もうまくいかず、逃げ出してしまうザックのことを考えると一番胸が苦しくなった。彼は自分がどういう人間だか理解している。だからこそ自分に嫌気が差してお酒ばかり飲んで、そのせいでまた上手くいかなくてという悪循環を繰り返している。一方で、子供には「善い人」で在ることを願い「自分のようにはなってほしくない」と言う。その他、ビンの母親も子供の頃のビンにより添えずに、夫の暴力からビンを守ってあげられなかったことを認め、けれどその過去を後悔するのではなく、今のビンが救われるために全力を尽くそうとする。どちらも決してハッピー!ではないけど、前に進もうと懸命に生きている人たちであると感じた。古臭い物語にはないニューテンプレートという感じもする。
スケートボードってやっぱり不思議な力があると思う。『Bones Brigate』でも有名なロドニー・ミューレンの技に向かう姿勢の話を読んでいても、私にはそれと同じように自分の能力を試しながら夢中になれることはあるのだろうかと思わずにはいられない。
久々に滑りたいな。
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