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映画『闇金ドッグス3』

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STORY

安藤忠臣(山田裕貴)のもとで働く元ホストの須藤司(青木玄徳)は、女性専用の金融システムを作り順調に女性債務者を増やしていた。彼の顧客には、夢を諦め切れない元アイドルのえりな(冨手麻妙)、借金をしてまでわが子を芸能界デビューさせたいステージママの聖子(MEGUMI)がいる。やがて、聖子の子供が所属するプロダクションの社長(津田寛治)が、かつてえりなをないがしろにした人物だということがわかり……。

映画『闇金ドッグス3』 - シネマトゥデイ

REVIEW

ガチバンシリーズのスピンオフ『闇金ドッグス』もついに第3弾。しかも今度の主役は山田裕貴演じる安藤忠臣ではなく、青木玄徳演じる須藤司。ここまでは2・3と読編が発表されたときに分かっていたのですが、それではいかにという感じで楽しみでした。


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ガチバンから闇金ドッグスになってから拳で戦うことが少なくなり、「どうしたら金が稼げるのか」「騙されずに生きていけるのか」ということが主題になっている中、この須藤という男が基本的にはお人よしで、人を欺いて生きていくことができない人間であるということが今回のポイント。忠臣も「自分は金貸しだ」ということにポリシーをもって詐欺まがいのことはしない信条のようだけど*1、須藤はそれ以前の問題というか、馬鹿というより基本は夢追い人なので、物事の優先順位をつける基準がお金にないということが、闇金(金貸し)という仕事にはあまり向かない。嘘か本当かわからないけど、ホストとして独立しようとしていたところ仲間に騙されたことが借金地獄のきっかけとのこと。これと、「女の味方でありたい」というこれも嘘か本当か判断がつきにくい想いのせいで、今回の騒動に巻き込まれていく。この原因と結果は忠臣の物語と対比するとわかりやすく、今までの物語のエグさは人間のずる賢さが露見したからだったけど、今回は夢を食い物にする輩の残酷さが際立ってエグみを出してたなぁと思う。そういうのって、ただの暴力とか騙し合いより大小問わずどこでも起こるかもしれないから、身に寄せてしまって結構堪えた。とかいって闇犬三部作の中で一番笑ってたのだけど。

闇金ドッグス1』で地下アイドルを追放されたえりなが再起を図る時の覚悟や頭のキレも一度地獄を見たからこそ表現できたものだと思うし、そういうところでえりなは忠臣に近いなと思う。まだまだ須藤には到達できないゾーンというか、それは彼には必要ないのかもしれないけど。また、津田寛治さん演じる芸能プロダクションの社長もこうして地獄を経験した後にどうなっていくのか気になるところではある。あれだけずる賢い人なら何か考えているはず。内容には関係ないけど、えりなが忠臣と再会するところでお互い気づいて「あっ」ってなると思ったんだけど、特にそういうこともなかったのが結構残念だなと思った。

忠臣と須藤の関係も1~3と進んでいく中で徐々に変化していって、忠臣からすると客がたまに裏切る忠犬になって、おもちゃになった感じなのかもなと思った。このおもちゃっていうのは、決して悪い意味ではなく、殺伐としていた忠臣の人生の中で唯一楽しいと思える瞬間を与えてくれるのが須藤というような感じ。須藤も忠臣のこと裏切ったらどうしよう…。私が悲しい…。

金の回収のために手を打って行動するところがいつものクライマックスだったけど、今回は違っていた。1・2であれだけ厭な感じで終わるだけにハッピーエンドなのが意外だったし、ガチバンシリーズと闇犬の違いってこの終わり方だと思ってたんだ。「闇金は債務者の人生を変えてしまう」ということをマイナスの方で表現してきただけに、今回のプラスへの転換は須藤らしさというか、忠臣との差異付けだったのかなと。つまり、忠臣のやってきたこと、これからやることには常に誰かの死があって、その上に忠臣は立って生きているんだということを暗に示すというか。それもこれもガチウルの西口さんから続いているのかなぁ。こじつけかな。

3まできたところで闇犬もいったん落ち着きそうなので、ガチバンシリーズ再開してほしいというのが今の率直なところ。だって、大人の裏の世界系の作品は飽和してるし、逆に高校生のモラトリアムとかリアルとかそういう方が少ない気がするから。ところで、舞台挨拶でウシジマくんをかなり意識してたけど、やっぱり山田が出ることへのステマなのかな。どっちにしろ楽しみです。(結局)

 

スタッフ

監督: 土屋哲彦
脚本: 池谷雅夫

 

キャスト

須藤司: 青木玄徳
田中聖子: MEGUMI
姫野えりな: 冨手麻妙
森慎太郎: 松林慎司
クリス青西: 内田滋
監督: 山崎直樹
安藤忠臣: 山田裕貴
塩田丸雄: 波岡一喜
沢村清志: 津田寛治

 

*1:闇金ドッグス2』を参照。