
STORY
「気持ちって何や?こんな柔らかいものに名前なんてあるか?」
2011年秋、福岡市内。
むかいの木造アパートの隙間から、十年間、姫を見守り続ける男たち。
この国の兵士として、姫の好きな人になりきって監視に励む、
尾崎豊、ブラッド・ピット、坂本龍馬、ダルメシアン。
姫を守ると言っても、干渉はしない。
それがこの国のルール。
ただただ、姫のことを知りたい一心で、
監視、尾行、盗聴、ゴミ回収しながら見守るだけ。
「ストーカーではない。兵士です。」ある日、この国に4人の来訪者。
姫の彼氏、中津留。
その借金を取り立てに来た、星と友枝。
そして尾崎の兄、幸雄。
姫を思っているだけのはずなのに、
どうしてか、この国が崩れていく─彼らは変態じゃない。ほんの少し恋の仕方を知らないだけ。
不器用すぎる男たちの純粋すぎて歪な恋の物語。
極めてやわらかい道 – GORCH BROTHERS
REVIEW
息苦しい。最初から最後まで人間が密集した時のような息が詰まるようなそんな感覚。映画化されたその作品は見ていない。何でか今までスルーしていた。でもまあこの作品が体験の始まりで良かったと思う。
初めはみんな大好き「推し活」の話なのかと思って見ていた。妙なシチュエーション、設定ではあるが、この劇場にいる人が誰しも共感できるような話題を提供してくれるのかと思っていた。けれど実際は共感からほど遠く、逆に理解されることを拒んでいるのかとさえ思うくらいの対象(姫)への執着。しかもそれは、その対象から何か良い体験を得たことが起点になっているのではなく、あくまで強い憧れが拡大していっているような不思議な状況。
「どうしてこうなったのか」という輪郭は見えているのに、知ることはできても理解ができない。ここまで姫に執着するのは何故なのか。姫という存在はそれほどまでに素晴らしいのか。実際、姫の実体はどうでもいいのだろうと思う。それよりもあの部屋にいた兵士たちは対象に自分の見たい姿を「投射する(プロジェクション)」ことに意味があっただけ。そう考えれば「推し活」と結局は同じらしい。
とりわけ「尾崎」にとって姫のストーカーという行為は母親によって与えられた傷から目を背け、母親に復讐するための作業になっていたんだろうなと思わずにはいられない。母親から「なに」をされていたのかを知ることはできない。でもそれが復讐であるとするのであれば彼らが姫にしているように「執着」「監視」していたのかもしれない。何もわからないけれど。
話は逸れるけどこの作品を観終わってすぐ、その作品の息苦しさに『イヌの日』という作品を思い出していた。
防空壕の中に「10年くらい閉じ込めておいたらどうなるんだろうと思って」という理由で同級生を閉じ込めた男と、その男の友人の話。『イヌの日』の他人の人生に大きな影響を与えてしまった男たちの話と、今回の兵士として姫を見つめ続けた男たちの話。どこが似ていると思ったんだろう、と考えた時にそれはやっぱり息苦しさなんだと思う。そして人間のままならなさ。本当にどうしようもない。
と考えながら調べてたら川名さんが『イヌの日』について話してるインタビューがあった。特に内容には関係がないので読まなくてもいいけど一応。
GORCH BROTHERS PRESENTS『極めてやわらかい道』│川名幸宏(潤色・演出)・鳥越裕貴 インタビュー | ローチケ演劇宣言!
そういば久しぶりに荒井さんのお芝居を見た、気がする。過去観たものの中で、今回も潤色と演出を務めている川名さんの『いとしの儚』はコロナ禍の舞台作品としてよく覚えている。ただ好きだった記憶はあまりないけど。
この頃から、いや本当はもうずっと前から荒井さんは泥臭い芝居をしている。私はその芝居を断続的ではありつつも観ている。そして多分これからも観に行くんだろうと思う。
