取り留めもない

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舞台『宮本武蔵(完全版)』

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STORY

伝説の剣豪として世に名を知らしめるも、その内面は臆病な男、宮本武蔵
色々と疲れの溜まった武蔵は、湯治のため山奥の宿を訪れる。そこには様々な面々と出会うこととなる。
私たちが考える理想の武蔵像からかけ離れた主人公、宮本武蔵は皆から偽物ではないかと疑われる。
証明のしようもないが、本物と認められたら命を狙われる、しかし偽物と思われても面白くない。
疑心暗鬼の中で、武蔵に恨みをもつ者、討ち取って名を上げたい者、さまざまな思惑が重なって、物語は思いもよらない方向へ。
最後までヒーローらしさも小次郎との決闘もなく、そのだらしなさが笑いを誘う現代会話劇。
“本当の宮本武蔵は、こんなんだったのではないか!?”

作品詳細 | 宮本武蔵(完全版)

REVIEW

本当にこれに尽きるんですよ。上記の公式あらすじを読んだんじゃ完全にわからない作品自体の魅力が多すぎて。そりゃ前回の上演を見てればわかるだろうけど、これじゃ届けたい人に届かないって思った。悔しかった。それくらい期待を裏切ってくれた作品だった。

確かに基本はゆるくてシュールな笑い。序盤なんか特にそう。全編に渡ってBGMがほとんどない(鳥の鳴く声くらい)から会場のあちこちでお客さんがくすくす笑ってる、のに静かという一種不思議な空間だった。そのままころころと話は進んで、見えてきたのは戦うことに消極的というよりなにがなんでも「死にたくない」という宮本武蔵。これは彼の生きざまということもできるし、友情の物語ということもできるし、はたまたラブストーリーなのかもしれない。いや、その全部だった。とにかく不器用な宮本武蔵。なにをやっても思うようにはいかない。本当はしたくないのに、してはいけないのに、しなくちゃいけないという気持ちに駆られて、いつの間にか一人になっている。だからこそ、あのラストは救われた。なんにも解決してないのだけど、解決することよりも大切なものがあるはずだと私は思った。武蔵がそう思うかはわからないけど。

山田裕貴宮本武蔵

舞台初主演おめでとうございます。山田裕貴という俳優さんは映像のイメージが強かったから、舞台ではどうなるんだろうと思ってた、正直。ありきたりな言葉だけど彼の宮本武蔵は彼にしかできないもので、その半分は山田裕貴だという感じがした。何のインタビューで読んだか忘れてしまったけど、脚演の前田司郎さんに「約半分、本人半分でいい」と言ってもらえたことが彼の役者としての契機になったということが、こういう作品を生み出すことに繋がったのかなと勝手ながら思う。今までは結構キャラクター(役柄)に寄った演技をする役者だと思っていたからなおさら。私たちが言っている山田裕貴が、あれほどまでにひょうきんで、臆病で、残酷で、哀しい表情を、表現を見せてくれたことが嬉しかった。

矢崎広佐々木小次郎

エターナルチカマツぶりかな。まだ、矢崎さんが主役をはっている舞台を観たことがないので観たいです。とぼけているような、かといって馬鹿というわけではなく利口さが滲み出ている佐々木小次郎。だからこそ、一回ちゃんと武蔵と向き合う場面も欲しかったなと思う。とにかく浴衣を着流す矢崎広さんがめっちゃかっこいい。

遠藤雄弥(亀一郎)

子持ちで所帯があるのにあの青年感はどこからくるのか。

金子岳憲(伊織)

最初こんなに包容力のある役だとは思わなくて、いてくれてありがとうなって思った。

鮎川桃果(千代)

まったくもって可愛かった。すこしだけ友人に似ていて恋しそうだった。

内田慈(ツル)

内田さんは映像では何度か見たことがあったけど、舞台では初めまして。リアルっていうのかなんていうのか、どうしようもない人の情と嫌悪感をまざまざと表現していた。あまりに真に迫って、感情移入してしまった。最後とか特に。

あと、前田さんも出演してましたよね。割とクズっぽい役で。最高でした。29日が最終日です。時間があればぜひいろんな人に見てほしい作品です。もちろん鬼邪高校の番長・村山とホワイトラスカルズのKOOさんが好きな方にもおすすめ。

 

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