取り留めもない

映画や舞台の感想書いたり、たまに日記も

ドラマ『あなたを殺す旅』

先日、全話放送されたので通しての感想を残しておく。

全編通して、これは小田島の物語だったんだなと実感した。初めから何も持たず、なのにずっと暗闇に閉じ込められているような、そんな状態からヤクザという家や親を見つけ、朝日という家族に出会った。歪かもしれないし、社会的には認められにくいかもしれないけれど、その場所は小田島が初めてくらいに出会った安住の地だったに違いない。

なのに、また失った。

最初は朝日にひとり置いて行かれたことに怒りを感じていたかもしれない。生きてしまった。そんな想いはあっても、死ぬこともできない。朝日が小田島に話した話を反芻して、なにが違ったのか考えて、その中に片岡を思い出す。あの人さえいなければ、朝日はここにまだいたのに。そんな、意味もない仮定を並べては、片岡のことを考える。ずっとそうやって、前にも後にも動けない自分を憎んでいる。

片岡に何も問題ないことなんて、とっくの昔に分かっていた。それでも、朝日を忘れないようにするために、それ以外のことを考えないようにするために、殺意と同居することにした。はじめは。でも、きっと殺さなくても良かったのだとどこかで気がついていた。「愛する」ことでも構わなかった。その想いを片岡は受け入れた。「愛せない」「愛したい」と思っていた小田島の心を受け入れた。その瞬間から「殺す」旅ではなくなった。

片岡はずっと終わりを探していたんだと思う。はじめからまともに生きてこなかった自分の最良の終わりを。誰かを守って死ぬのでもいいし、誰かの代わりに死ぬのでもいい。誰にも執着せず、たくさんの人に愛された想い出だけ持って。でも小田島に出会った。自分とは違って不器用に生きる小田島に。分かりやすい殺意を、最初は面白がっていたのかもしれない。でもそれが、無表情な小田島の中にある、ともすれば彼自身を破滅に追いやりかねない感情だと知った時、思わず手を伸ばしたくなってしまった。自分が、こいつを救える唯一の存在だと分かったから、額に銃口を当てられても構わなかった。

結局2人が生きることを決めたのは、死ぬよりも確かな自由がそこにあったから。最良の終わりがそこにあったから。愛し合うことが、この2人の答えだった。気づけて良かった。諦めないで良かった。そう思った。

小田島は片岡を生かし、片岡は終わりを探すのをやめた。これからは生きることに意味を考えなくても良い。そんな2人をどこまでまた見られたら良いなと思う。