ストーリー
高校生タイラーは、成績優秀なレスリング部のエリート選手、美しい恋人アレクシスもいる。厳格な父親ロナルドとの間に距離を感じながらも、恵まれた家庭に育ち、何不自由のない生活を送っていた。そんなある日、不運にも肩の負傷が発覚し、医師から選手生命の危機を告げられる。そして追い打ちをかけるかのように、恋人の妊娠が判明。
徐々に狂い始めた人生の歯車に翻弄され、自分を見失っていく。そしてある夜、タイラーと家族の運命を変える決定的な悲劇が起こる。一年後、心を閉ざして過ごす妹エミリーの前に、すべての事情を知りつつ好意を寄せるルークが現れる。ルークの不器用な優しさに触れ、次第に心を開くエミリー。やがて二人は恋に落ちるが、ルークも同じように心に大きな傷を抱えていた。そして二人はお互いの未来のためにある行動に出る・・・。
内容は想定していた通りというか、本当に平たく言ってしまうと家族の破壊と再生の話。どう考えたって最悪、という状態から抜け出すときに必要なのは圧倒的な愛なのだなと思い知る。『MOTHER』を観ているときも思ったけど、子育てって大変だよな。
バタフライ・エフェクトのように、一個ずれてしまったボタンのせいで今まで築き上げてきたものがあっという間に崩れ去ることの恐ろしさ。後悔しても仕方ないのに、後悔することしかできない。行き詰まってしまって、これではだめだと思うのにうまくいかない。そうして次第にようやく視野が広がって、見えてくるのは近くにいる人達の愛。こんなこと経験したくないけど、この映画を通じて感情だけでも知ることができてよかったと思う。
物語が割と普遍的な中で、特徴的なのは映像の作り方と、音楽の使い方。クザヴィエドランの映画が好きな人は好きそうだなと思いながら観ていた。『Mommy』『胸騒ぎの恋人』あたりね。この作品もだけど、あまり新しすぎないプレイリスト感が映画全体のエモーショナルな雰囲気をより一層強くしてる。
個人的にグッと来たのはタイラー・ザ・クリエーターの『ifhy』。メインキャラクターのタイラーという名前と繋がってて、シーンのぐちゃぐちゃに混沌とした感情をうまく表現してると思った。あと、カニエの『I Am a God』は懐かしいなと思ったし、こんなHIP HOP、インディ寄りのプレイリストにも必ずいるレディへはすごい。まあ、レディへもインディなのか。
ルーク役のルーカス・ヘッジズやアレクシス役のアレクサ・デミーは本作と同じA24で制作された『Mid90s』にも出るらしい。元々観るつもりだったけど楽しみ。