DD過ぎて中身が薄い

映画や舞台の感想書いたり、推しが大好きと叫んだり。

PARCO STAGE『人間風車』

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STORY

売れない童話作家の平川(成河)が披露する奇想天外な童話に、近所の子供たちは大はしゃぎ。
けれども、童話の登場人物や題名はレスラーの名前、テーマも"三流大学出身より高卒の方がまし" だから、子供の親からはクレームばかり。
公園に集まる子供たちの中には、へんてこ童話の主人公になりきって現れる奇妙な青年・サム(加藤諒)がいた。
ある日、平川はひょんなことからTVタレントのアキラ(ミムラ)と知り合う。その出会いは平川の作風にも大きな変化をもたらしていくのだが…

人間風車| PARCO STAGE 

REVIEW

鉄コン筋クリート』 という松本大洋の漫画がある。クロとシロという少年が居場所を追われ、戦い、苦悩し、最後は自分たちの新たな場所を見つけるという話だ。クロはシロを身をていして護り、シロはクロを精神的に支える。ときにクロが闇に飲み込まれそうになっても、クロを救うことができるのはシロだけ。これは偶然で、奇跡なんだ。クロにシロがいたことも、シロにクロがいたことも総て。

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 『人間風車』は平川という人間の破壊と後悔の物語。ただただ闇に落ちていくばかりといえばそれまでだ。平川は人間の無垢を持ち、邪悪を育て、悪の華を咲かせてしまった。そして後悔する。死ぬまで生きて苦しみ続ける。もし彼に、彼を理解しいつも寄り添ってくれる存在があったら。もし彼に、理解し分かり合える存在があったら。クロのシロ、シロのクロが居てくれたら。恐ろしい怪物と決別することができたのではないかと思わずにはいられなかった。もちろん、それは平川自身のせいでもある。彼は他人を理解し分かり合うような関係構築をしてきていないように思える。人望、人徳のなさというのか。ある側面では「いい人」であるかもしれないが、他人から見れば「クズ」かもしれない。彼は彼自身の軽率な言動で彼はアキラを失い、国尾に裏切られ、小杉に馬鹿にされた。最後、かわいそうな平川はいつまでも自分の中に悪を飼いながら生き続けることを観客は知る。そうして観客は平川を通して人間の愚かさと、美しいものの儚さを同時に知る。私はこの作品を観て、純粋無垢に誰かを信じたり愛することの難しさというものは、信じたい愛したいと思うほどに大きくなっていくものなのかもしれないと思った。

この物語は残酷だ。人は惨たらしく死ぬし、救いようのない展開が広がっていく。視覚からの刺激は大したことではない。平川の物語を聞いたサムのように、観客の中で大きく膨らんだ想像力がどんどんどんどん心から余裕を奪っていく。全部自分が作り上げた虚像だと分かっているのに、実際に目で見るよりも恐ろしい。この感覚がとても不思議だった。

平川を演じた成河さんの演技を初めてみた。初めのうちは子供のように無邪気な平川が悪に取り憑かれ暴走し、自らの愚かさに絶望する様子は、苦悩する平川その人だった。台詞量は相当なものだったが、闊達に言葉が連射されるのは小気味よく、伸びのある声は最後まであふれる源泉のようにとめどなく発せられていた。すごい。つかこうへい劇団わかるという感じ。一公演の精神の消耗は想像もつかない。

サムを演じた加藤諒くんは、残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』ぶり。彼が身を投げる瞬間、サムの無垢の中に『淋しいマグネット』のリューベンを見た気がした。サムもリューベンのように「誰か」信頼できる人を探していたのだと思う。31歳にもなって何もできない自分が、別の人物として生きることができるというのは夢のような出来事だったのかもしれない。でも、何か起こしたサムは本当に幸せだったのだろうか。サムは平川に「ずっと見ていてくれ」と懇願した。きっとサムも平川のことをずっと見ているんだろう。死ぬまで生き続ける平川のことを。

 

目当てにしていた松田凌は死ぬまでいきいきしていた。果たして今の小学5年生がいったいどんな風なのかまったくわからないが、始終楽しそうだったし、実際アフトで楽しいと言っていた。声の作り方が『パラノイア★サーカス』の少年を思い出させた。

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そして彼の気持ちがわかったからこそ私も悔しかった。

アフトは和んだ~~~。ササキさん(進行役)の知の欲求がすごくて、松田凌と矢崎広のミュージカル『薄桜鬼』の馴れ初めを話させたり、呼び方を暴露させたり、なんだったんだあれは。二人に挟まれる良知くんは「劇的に顔が良い」ってことが強烈に脳に焼き付いている。つまりはサイコーなアフトでずんと沈んだ心が救済された。ありがとう。あとは東京千秋楽なので、そこまでにまたパワーアップしてるだろうから、心を鍛えておかないとだな。