取り留めもない

映画や舞台の感想書いたり、たまに日記も

GORCH BROTHERS 2.1『MUDLARKS』

f:id:aooaao:20221003130009j:image

STORY

舞台はイギリス、エセックスの工業地帯。灰色の街。灰色の空。

遠くに揺らめくロンドンの光。幼馴染の17歳の少年チャーリー(田中穂先)とウエイン(永島敬三)がテムズ川の川縁に隠れている。ついさっき橋のうえで起こした「なにか」の興奮さめやらず、息も切れ切れの2人。そこにはぐれていたジェイク(玉置玲央)が現れるが、体は震え嘔吐し、明らかに様子がおかしい。ジェイクは「なにか」の顛末を見たらしい。

そして鳴り続けるチャーリーの携帯電話。

追い詰められたジェイクの口から、ついに「起こしたことの真実」が語られる。凍てつくような夜が更けていく中、ぶつかり合う少年たちの恐怖、狂気、焦燥、それから夢。未来が見えない街で未来を変えようともがく少年たち。

その行き場のない苛立ちが露わになり3人の関係が歪み始める。

川の水、なんか怒ってるみたいじゃない?

ぬかるみの上を走ってる。

怒ってこっちに迫ってきてる!

もう時間がない。

夢見てたんだ…クソみたいな夢。

GORCH BROTHERS2.1 | MUDLARKS

REVIEW

若気の至りというにはあまりにも大きな出来事。バタフライエフェクトの顛末が解き明かされないく中で、彼らの幼さと未熟さと、同時にこれから待っていたであろう明るい未来まで透けて見えてくる。夢であればいいのにと思うほどの悪夢から逃れられない。鬱屈とした街、鬱陶しい人々、微妙なラインで保たれていた関係性の均衡が破られクライマックスへ。そういう作品だった。

こういうテーマは嫌いじゃない。少人数で展開される会話劇なんて、どっちかと言えば大好きな部類。なのに何故か気持ちが乗らなくて困った。ただでさえ好きな俳優たちと小屋なのに、期待値に達しないというのがズバリその通り。悪くない。でも、良くもない。理由はひとつ、脚本がそこまで良くない。新進気鋭の若手作家の作品ということを差し引いても、良くあるテーマでそこまで没入できなかった。というよりも、おそらくエセックスの雰囲気とか言葉とかそういうのも含めて成立する作品なんだと思う。『トレインスポッティング*1を標準語に近い日本語で、日本人が演じてても面白くないだろうなと思うように。

ついでに言うと、こういうテーマの日本の作品を私は知りすぎている。特に『ライチ☆光クラブ*2が鬱屈とした感じとか、ラストの描写とか似過ぎている。そしてそれに出ていた役者もいる。比べないなんてできなかった。似ているということがなんとかというよりも、圧倒的にライチの方が私にとって納得性があった。少年たちの生い立ちも今後も想像できるかできないかは結構重要。それでいうと、やっぱりこの作品よりもしっくりくるものが他にあるなと思う。