取り留めもない

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舞台「テイク・ミー・アウト 2018」

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www.takemeout-stage.com

STORY

男たちの魂と身体が燃え滾る、「ロッカールーム」。彼らにとってそこは、すべてをさらけ出せる楽園だった。ひとりのスター選手による、あの告白までは-。

黒人の母と白人の父を持つメジャーリーグのスター選手、ダレン・レミングは、敵チームにいる親友デイビー・バトルの言葉に感化され、ある日突然「ゲイ」であることを告白。それは、150 年に及ぶメジャーリーグの歴史を塗り替えるスキャンダルであった。しかしダレンが所属するエンパイアーズ内には軋轢が生じ、次第にチームは負けが込んでいく……。

そんなときに現れたのが、天才的だがどこか影のある投手、シェーン・マンギット。圧倒的な強さを誇る彼の魔球は、暗雲立ち込めるエンパイアーズに希望の光をもたらしたのだが-。

舞台「テイク・ミー・アウト 2018」オフィシャルホームページ | チケット情報やキャスト紹介など

 REVIEW

できるだけさまざまな人間を、描こうとしているのだなと思った。そして美醜も含めて沢山の出来事を舞台上に浮かび上がらせた。ただのカミングアウトの話じゃない。セクシャルマイノリティだけの話じゃない。差別の話だ。

閑話休題。ここ最近のタイムラインではセクシュアリティに関する話題が多かった。「差別をする人への差別」についてのネット記事や「マイノリティを理解してほしいんじゃない。平等に差別がなくなればいいというだけ」という意見。確かに何事も革命が始まる時にはオピニオンリーダーいて、全員を代表するような物言いで演説する必要はあると思う。でもそれがある程度成熟してくると、逆のことを言う人が出てくるようにもなる。そんなのいろんな人がいるのだから当たり前で、これはどうしようもない。そういう風が流れた時こそ変革の時。偏見や差別はもちろん配慮もいらないというマインドに変わっていけばよいと個人的には思う。わざわざ「カミングアウト」したり、それに対して慮るようではまだまだ先は長い。

舞台の話に戻す。誰からも憧れていた白人と黒人のハーフというキャラクターのダレン・レミング(章平)。こういうキャラクターを出す時点で「ある程度」人種差別に対する考え方が成熟した状態であることを示しているのだと思った。そんな彼がゲイであるとカミングアウトした。それは環境や彼自身の覚悟が固まり、そのことで何と言われようと非難されたとしても大丈夫と驕っていたからできたこと。彼はアメリカの憧れである彼が周りに与える影響を軽んじていた。自分さえ保てていれば必ず前に進んでいくと思っていた。でも実際は違っていた。まだ彼の考えていたような世界になっていなかったのだ。彼のその告白がいろんな人の行動や人生を変えた。それだけでも人は一人では生きていけないものなのだなと改めて考えさせられた。

そんな渦の中、彼とメイソン・マーゼックは出会う。メイソン(玉置玲央)は彼自身のやり方でダレンを知ろうとする。初めて会った時から恋をしていたのかもしれない。でもそれと同時に野球に恋をした。ダレンが野球を嫌いになりそうだった時も、初めて野球を知った子供のような純真な心でメイソンはダレンと向き合った。それは確実に「同性だったから」惹かれあったのではないというような気持になるまでの愛の結晶の美しさがあった。結局、人間は性別を好きになるんじゃないのだと改めて感じる抱擁を観て涙を堪えることができなかった。雰囲気は異なるが、中村明日美子の『Jの総て』にも同様の愛を見ることができる。

新装版Jの総て1 (中村明日美子コレクション 4)
 
新装版 Jの総て2 (中村明日美子コレクション 5)
 

 親友のダレンを、そして言葉を知らないショーン(栗原類)を一番理解していると信じていたキッピー(味方良介)はこの物語の進行役として存在し、観客に最も近い存在だった。それは「理解している」という態度をとってしまうことも含めて人間という集団に似ている。そもそもそういう驕りがあって、他と違う態度をとることがひとつの差別であるという課題を乗り越えられていない。こんなこと書いているからといって乗り越えられるべきなのか、そんな日は来るのか私には分からない。少なくとも私は「理解する」よりも「特別視しない」ことに努めることができるだけ。世の中が特別だと思っている人よりも、北関東から出てきた20代の面倒くさい人間の方が周りに害な気がするし。私だ。

www.netflix.com

クィア・アイ』というリアリティ番組の中で、もちろん活躍するのはセクシャルマイノリティの5人なんだけど、それと同じくらい彼らと時間を共にするその他の人たちの想いや考え方をフューチャーしていて良かった。この番組に出るくらいだから差別感情丸出しなんてことはないんだけど、それでも特別視しないなんてことはなくて、観ているこちらはただ「当たり前」に感じられるようになればよいなと心の底から思う。それでもやっぱり「思っていることはちゃんと伝える」という国民性のアメリカはそれによる衝突が多い分進歩も早いのだろう。

ところで味方くんのキッピーはめちゃくちゃ本田圭佑

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シーエイティプロデュース『Take me out 2018』03/30-05/01 DDD青山クロスシアター |

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今普通にグローブがほしいの。

 

全然関係ないけど私の中のTake Me Outはこれです。

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