STORY
ウェイトレスをしながらナイトクラブで歌っているマリーナは、年の離れた恋人オルランドと暮らしていた。マリーナの誕生日を祝った夜、自宅のベッドでオルランドは突然意識が薄れ亡くなってしまう。最愛の人を失った悲しみの最中に浴びせられる不躾で容赦のない差別や偏見を浴びせられる。ふたりで暮らしていた部屋から追い出され、葬儀にも参列させてもらえない。マリーナにとって、ただ愛する人に最期のお別れを告げたい、それだけが唯一の望みだった――。理不尽な現実を乗り越えて前を向いて歩き始める彼女の姿に、観る者はいつの間にか共感し、幸せを祈りながらエールを送ってしまうはずだ。
REVIEW
私の人生なんてちっぽけで退屈だから映画や演劇を観る。本当に面白いと思えるものはなんなのか。それは私にとってどんな存在になるのか。今はまだ何もわからないけどだからこそ探し続ける。でも時にはこれだって思ったものが実は通過点でしかなかったなんてこともある。『ナチュラル・ウーマン』の主人公マリーナもそうだ。
彼女にはこの人しかいないと思った恋人がいた。けれど彼は突然この世を去ってしまい、彼女は残された。そんなこと思っても見なかったはずだ。だからこそ戸惑い打ちひしがれる。加えて恋人の家族たちもマリーナを追い込む。けれど彼女の人生はまだひたすら続いていて、今まで頑なに女性であろうとしたのにも関わらず、男性としてたどり着いたコインロッカーの中を見て再び歩き出すことにした。その中身が彼女にとって幸せだったのか、またはその逆だったのか誰も分からない。
原詩
Ombra mai fù
di vegetabile,
cara ed amabile,
soave più日本語訳
かつて、これほどまでに
愛しく、優しく、
心地の良い木々の陰はなかった
最後にこの歌を歌うマリーナの清々しい顔を観たら自分も少しずつでも前に進んでいかなくてはならないなと思わされたのでした。あとセクシーに生きたい(願望)