STORY
シャー(チン・ハオ)とチャンが経営する南京のマッサージ院では多くの盲人が働いている。 若手のシャオマー(ホアン・シュエン)は、幼い頃に交通事故で視力を失った。医師の診断は「いつか回復する」というものだったが、その日は一向にやってこない。
生まれつき目の見えない院長のシャーは結婚を夢見て見合いを繰り返すが、視覚障害者であることが理由で破談してしまう。それでも懲りずにパートナーを探し続ける明るい男だ。 客から「美人すぎる」と評判の新人ドゥ・ホン(メイ・ティン)もまた、生まれつき目が見えない。彼女は自分にとって、何の意味のもたない“美”に嫌気がさしていた。そのことを耳にしたシャーは、彼女の“美”が一体どんなものか知りたくて仕方がなくなる。
そんなマッサージ院に、シャーの同級生ワン(グオ・シャオトン)と恋人のコン(チャン・レイ)が駆け落ち同然で転がり込んできた。まだ幼さの残るシャオマーは、コンの色香に感じたことのない強い欲望を覚えはじめる。
ある日、爆発寸前の欲望を抱えたシャオマーを見かねた同僚が風俗店へと誘った。そこで働くマン(ホアン・ルー)と出会いによって、大きく動き出した運命の歯車。己を見失いもがき苦しむ中で見つけた一筋の光とは…。
REVIEW
「目が見えないことで真実が見える」と信じている自分がいたことに気がついた。
そんなのは自分自身への欺瞞だった。そうすることで、なにか違うという感覚を正当化していただけだった。作品の中で「健常者と盲者は別の動物。健常者が神仏を崇め距離を置くように、盲者は健常者に対して距離を置く」というようなことを言うのだけど、それだ。違うものだと思いたかったのだ。
映画の中で盲者のコミュニティを見ているときにわかった。彼らは見えないからこそ、ちゃんと伝える必要があるのだと。それの方法は露骨かもしれない。利己的かもしれない。でも、その懸命さに自分自身の怠惰さを思い知らされた。自分は何をしているのかと。
どちらが良いのかなんて、考える必要はない。私たちに選択する自由はない。ただ生きるだけ。
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