取り留めもない

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映画『エヴォリューション』

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STORY

少年と女性しかいない、人里離れた島に母親と暮らす10歳の二コラ。その島ではすべての少年が奇妙な医療行為の対象となっている。「なにかがおかしい」と異変に気付き始めた二コラは、夜半に出かける母親の後をつける。そこで母親がほかの女性たちと海辺でする「ある行為」を目撃し、秘密を探ろうとしたのが悪夢の始まりだった。

映画『エヴォリューション』公式サイト 

 REVIEW

このファンタジー作品の良さは「文章で表現できないリアリティ」だと思う。おどろおどろしく不気味で、はじめから様子がおかしいのだけど、見ているうちに自分の体験とリンクするというか、子供の頃の自分には世界がこんな風に見えた瞬間があったかもしれないとさえ思えてくる。特に、海はいろいろな含意があって、私には「人間の本能的な恐怖として」「総ての生物が生まれる母として」「外界と隔てる壁として」存在するように見えた。同じものを見ても、他の人には違って見えていると思う。そんなだから、「いったい何を表現しているのか」というのも人それぞれ違うし、それが「文章で表現できないリアリティ」。観客ひとりひとりの個人の体験と結びついて、圧倒的な説得力が生まれていた。

まあ、そんなことばかり書いてても面白くないので補足すると、長編作品としての前作『エコール』が女の子の解体だとしたら、『エヴォリューション』は男の子の解体。そして今回はことさら「男の子」への神話性と残虐性が強かった気がする。つまり、かわいらしい男の子をいたぶることへの歓びと背徳感に満ち満ちていたということ。女性監督が小さな異性に夢をみるような雰囲気に感じたからなのかもしれない。

昔、海の岩場で怪我をした子が、傷が治ったのにも関わらず足が痛いものだから病院に行ってみるとすると、傷口からフジツボが入っていてレントゲンにその姿がびっしり写っていたというホラ話があったけど、そういう手触りの作品だった。