取り留めもない

映画や舞台の感想書いたり、たまに日記も

『露出狂』もハーフタイム中だから部活の話をします。

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ついに始まりましたパルコプロデュース『露出狂』。はじめから分かってたことだけど、ブルーシアターのキャパ広すぎなので、まだまだ観たい公演観られる。すごくない?全バージョンみよう?オススメはリピーターチケットです。

そんなことはさておき、物語は簡単で「部活動」というものの中に、高校生活という狭いコミュニティの面倒臭いものをごちゃった感じの群像劇。もちろんサッカー部だから、チームの勝利への飽くなき挑戦、それ以上にサッカーがやりたいという気持ち、同時に築かれて壊れていく人間関係。そしてそれが全部入り乱れて進んでいく。同じ部活の仲間でも、考えてることや安堵感は確実に違うし、そこをなんとかひとまとめにしなくてはいけないつらさ。めちゃくちゃわかる。

ここから自分語り入ります。

高校は軽音部でありえんくらい手を抜いていたからあまり熱なんてなくて、ギターの子が抜けた時に私以外のみんなが号泣してたくらいしか記憶にない。「勉強に専念したい」って週一で三十分しか練習してないバンドのメンバーに対してそれ言うのどうなの。まあいいけど。

中学では割とガチでソフトボール部やってて、三年の時は部長でキャプテンだった。大して強くなかったのに、なまじ小学校の頃から野球やってた子が同級生にいてしまって、顧問の先生は張り切るし、その子が投げて三振取りつつ、三番でホームラン打ってたから県大会は普通にいくようなチームになってた。そんな中自分は一年の時に見たソフトボール部のピッチャーがあまりにカッコ良すぎて入ったって感じで、競技自体に愛着はなく、根性はあったのでそれなりに頑張るというスタンスを取ってたらいつの間にか部長だった。しかも、一番打てる子が「四番は嫌だ」と言い、その子に比べたらクソみたいなレベルなのに四番バッターになってしまった。だからめちゃくちゃ頑張った。

なんのためにチームとして頑張っていたかなんて今考えれば理由なんて特になくて、好きだからかと聞かれると正直違うと思う。練習つらかったし「好き」ではなかった。運動部以外は美術部しかなくて、三年間何かしなくてはいけなかったからやっていただけだった。同じような気持ちの部員がほとんどで、あとは惰性だった。それなりに強かったから勝てるし、嬉しいし。貢献できてるかは別として。

女子しかいない部活だけど、私も含めて「先輩に憧れて」入部する人が多かった。これがちょっと厄介で。私は三年の時にほぼ週一のペースで一年から手紙をもらっていた。そこには、私がいかにカッコ良いか、それがどれだけ尊敬に値するのかというようなことがつらつら書いてあって、可愛くハート型に折ってあった。悪い気はしないけど、生産性がないその手紙は読んですぐに捨てた。私が卒業してから、その手紙をくれていた子は教師と噂になって、その教師は自ら死んだ。部活が彼女の何かを狂わせたのかはわからないけど、そんな彼女の中学卒業時に、私に挨拶しに家まで来たときはさすがに「ドラマだなあ」と思った。本当の話です。

なんのために部活をやってたのか、なんのために他人とひとつになったのか私もわからない。でもよく聞く話、部活を中心に生活してきてしまったら、心を許した人たちともう一緒にいられないとなったら、何もなくなってしまうんだろうな。それを大人は「これからの糧になる」とかそういうことを言ってしまえるんだろうけど、それは部活というものを「経験するもの」「自分の中を通り過ぎてるもの」と考えることができる人で、刹那主義的に重きを置いてしまう人にとっては、それが充実していればいるほどその終わりが世界の終わりにも思える。

舞台『露出狂』の話に戻ると、

私は完全に「メンドクセーから放置して帰る」タイプ側の人間なので、自分自身の青春というものに夢を見ていなかった。たぶん部長の御器ですね。十代なんて一瞬で過ぎていくものだし、私にはキラキラしたドラマティックな青春は無縁だった(一部でドラマティックだったけど)。大概の人はそうだと思う。その中で、いつも「この一瞬を永遠に」と思う人がいるとは限らないけど、この『露出狂』では比留だったというだけの話。そういう人はどっちみち環境や時間に押し流されて、都度周囲と自分の間に違和感を感じながら他と同じように生きていくか、自分でその時間を止めてしまうかなんじゃないかなあ。という感じで自分の部活の話に寄せて考えたら、『露出狂』はそれほど突飛な話ではないと思った。あくまで精神的な領域で考えたときの話、日常にあるものが日常にないものと融合した「マジックリアリズム」だなって。ただ、そんな小難しいこと言わずに、汗と鼻水を流しながら熱量で演じ切る若手俳優たちを見るのって最高ですよ。演技の技量の差はあって然り、あのぶっ壊れた世界を成り立たせることが彼らの命題なので、その一人一人の集中力は必見だと思う。

つまり、観て。ブルーシアター行って。後生だから。

 

『露出狂』戯曲PDF