取り留めもない

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映画『闇金ドッグス』

STORY

ある事情から、若くしてヤクザの親分となったものの足を洗わざるを得なくなった安藤(山田裕貴)。一気に権力を失った上に、闇金業者の小中(高岡奏輔)から追い込みをかけられるはめに。完全に首が回らなくなった安藤は、自身も闇金業者となって金を稼ごうと考える。地下アイドル・けろリズムの熱狂的ファンを顧客にするも、なかなか思うように回収ができない。やがて、悪徳芸能事務所の社長(津田寛治)や彼から金づるとして搾取されているけろリズム・えりな(冨手麻妙)らが絡んだトラブルに直面していく。

映画『闇金ドッグス』 - シネマトゥデイ

 

REVIEW

安藤忠臣のことは『ガチバン』の頃から好きな思い入れのあるキャラクターで正直レオみたいに『ガチバン』の中で取り上げられることはあっても、学生でもないし無理だよなって思いでいたから、こうしてニュージェネ後の姿を見られて嬉しかった。でも、ヤクザとして世知辛い世の中をサバイブしていくものだとばっかり思ってたからか、観る前は「闇金かよ」と思わないこともなかったけど、やっぱり池谷雅夫すげえやっていう。

 

ここからネタバレ気にせず書くのでご理解ください。

 

まず、観る前から気になってた「なんで忠臣は闇金業者になったのか」問題だけど、消化50%くらいでまあまあ消化不良。組のしっぽ切りで関西の組織との間の抗争のけじめってことで、下部組織の解散&頭の引退&縄張りの受け渡しってことなんだけど、その原因となる子分(名前忘れた)の裏切りのとこもうちょっ噛みしめられる程度に情報をくれないか。知ったからといって今回の物語には関係ないんだけど、それをおかずに若頭~組長っていうところを妄想したいじゃん?叶わぬ願いなんですけどね。

 そんなこんなでカタギになったものの、闇金に借りたたった50万が払えない→筋を大事にしすぎて踏み倒せないっていう忠臣がめっちゃ愛おしかった。こういうところにおいてはたぶん一般人のほうがずるくて逃げ出せちゃうんだろうけど、「義理」「人情」「筋」みたいな食べても大しておいしくないようなもので生きてる忠臣はそうはいかないんだろうねっていう。そういう忠臣に対して「闇金としての生き方」を小出しに教えていく小中(高岡奏輔ってまた漢字が変わってる)の目的がよくわからないから続編作ってくださいっていうのはおいておいて、『ガチバン』の中でもそうだったけど、忠臣自身が覚悟を決める時って最高に切羽詰まってそんでもって他人が引き金で、これも一種「他人に生かされてる」感覚のような気もするんですよね。自分に選択肢がないという意味で。どうでもいい話ですけど、忠臣の妹はサクラ(20)。 

話は戻って『闇金ドッグス』は忠臣の話ではあるけど、本論は地下アイドルとトップオタの関係性の話でもあって、ドルオタを兼務している私自身としても身をつまされる思いで見てた。この間、日曜午後の麗らかな時間に放送している『ザ・ノンフィクション』でカ・タ・モ・ミ・女子なるものとそのファン(オタク)について特集してて「つらい世界だ」と共感しながら哀しく思ったばかりで、この映画の中でも「お前(地下アイドル)にとってファン(金をつぎ込んでくれる類の)が担保だろ」というのが闇金小中の言葉に「そうそう!それですよね!」って首がもげるくらい同意してしまって、首から肩にかけてが痛かった。

少し話はそれるけど、最近気になっている俳優周辺でたびたび勃興する問題をまとめたエントリがあったので時間があったら読んでほしい。

a2oo879k.hatenablog.jp

途中でD2(D-BOYS)の三津谷さんが「自分はチケットを捌けさせる要員なんじゃないか」って演出家に愚痴っていたっていうくだりがあるんだけど、結局役者でもアイドルでも芸能人(アマチュアも含む)は担保がファンであり、その担保を信用して周辺の業界人がうるさくたかって、金や物が動いていくっていうのは卑弥呼邪馬台国のアイドルであった頃から変わらない訳だし、そこには演技が上手かろうと下手だろうと、歌が上手かろうと下手だろうと関係ない。だから、三津谷さんの役者としての悩みは論点がずれてるし、そもそもに話を戻して『闇金ドッグス』のえりなみたいにファンを「キモオタ」呼ばわりして失ってはいけないんですよ。ファンの方も「自分が相手に何を求めてるのか」っていうのは考えて心に決めおくべきだと思うけど。

それまで無駄に細かいカットがあってイライラしたことを忘れさせてくれた、あのクライマックスはスピード感があって最高だった。特にトップオタに殺されそうになるアイドルの部屋にやってきてしまった小中と忠臣の4人のやりとりは、状況的にはギリギリなはずなのに妙に気が抜けていて笑ってしまった。ここはぜひ観てほしい。観ないとわからない。で、そこからの忠臣の突き抜け感。途中まで「山田(忠臣)はどうやって這い上がってくるんだろう」って思ってたんだけど、そんな心配を手加減なく飛び越えてきた。清々しいまでの悪。語弊があるかもしれないけど、その瞬間に「山田裕貴」から「安藤忠臣」になったと私は思った。山田くんって基本的に不思議でふわふわしたイメージだけど、忠臣みたいな役を演じることができるのはすごいと思う(たぶん贔屓目)。 

煙草のやりとりとか、誕生日ケーキとかそのほかいろんなところも注目すべきところがあるので、『ガチバン』から観ている人はもちろん、D2の山田が好きな人ももちろんみてほしいなぁと思うけど、作品が好きな人が増えると嬉しい。

 

【舞台挨拶(1回目)について】

・監督を除くメンズがスーツでかっこよかった

・山田くんが大半ニコニコしてたのがかわいかった。天使かと思った

・高岡さんが0ズレでこわかった(いい意味)

・山田「OKグ~」

・冨手さん(元AKB候補生)の「アイドル時代は黒歴史」発言

 ・客層に青木玄徳さんのファンが多かったけど実質10分くらいの出演だったので楽しかったのかなっていう

 

山田くんが言ってたけど、忠臣が本当に生きているみたいにスピンオフになって描かれていくっていうのは作品とキャラクターのファンには夢だったし、期待していたものを越えていたから、ファン冥利に尽きる映画だなぁとしみじみ思いましたというところで終わりします。