STORY
6歳のムーニーと母親のヘイリーは定住する家を失い、“世界最大の夢の国”フロリダ・ディズニー・ワールドのすぐ外側にある安モーテルで、その日暮らしの生活を送っている。シングルマザーで職なしのヘイリーは厳しい現実に苦しむも、ムーニーから見た世界はいつもキラキラと輝いていて、モーテルで暮らす子供たちと冒険に満ちた楽しい毎日を過ごしている。しかし、ある出来事がきっかけとなり、いつまでも続くと思っていたムーニーの夢のような日々に現実が影を落としていく———
映画「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」公式サイト 2018年5/12公開
REVIEW
真綿で首を締められるようなそんな気分だった。ムーニーが笑えば笑うほどきっとやって来る最悪な結末が受け入れられなくなってしまうことが分かっているから。まあその結末っていうのがこの映画の一番残念なところで、端的に言えば映画『エスケイプ・フロム・トゥモロー』を観た時のあの感覚が蘇ってきた。いやあの場所の使われ方は全く違うんだけど悪趣味な使い方してるなっていう感じ。伝われ。
ヘイリー役のブリア・ヴィネイトはこれが映画初出演っぽいけど、心の中はまだ子供な感じがにじみ出ていてあれは演技ではなかなか出ないだろうなと思った。なんとなく雰囲気がハーモニー・コリンの映画に出てそうな女性。って思ったらマシュー・マコノヒー、ザック・エフロン出演のハーモニー・コリン監督作『The Beach Bum(原題)』に出演するらしい。分かる。っていうことからも分かるようにこの作品の配役がメチャクチャ素晴らしい。ムーニー役のブルックリン・キンバリー・プリンスは8歳にして素晴らしい経歴なだけあってさすがの演技力。ラストシーン、親友のジャンシーに会いに行って総てを悟ってしまったことを吐露するシーンではもう手を差し伸べることさえできないからつらくてつらくて。どんなことがあっても幸せになってほしいと思った。ジャンシー役のヴァレリア・コットは「監督から現場近くの量販店でスカウトされオーディションに参加した」ってなにそれすごい。厳しくも優しいモーテルの支配人・ボビーは彼自身家族と複雑な関係っぽいけど、だからこそヘイリーとムーニーをできるだけ守りたいという気持ちがありそう。ウィレム・デフォー様様。
日本の下層社会の作品っていうとこっちもそれなりに想像出来るし、良作でない限りしんどいから観たくないと思うんだけど、この作品ではそういうつらさはそこまで感じず、どちらかというとネグレクトもせず愛し合って生きていこうとしていた親子がどうして離れ離れにならないといけないんだろうっていう想いが強かった。でもどちらにも共通するのは下から這い上がることの難しさなんだろうなと思う。
日本の映画だったらここらへんが素晴らしいです。『無垢の祈りは』親子関係が今作とは異なる系のしんどさ。
ショーン・ベイカー監督は『タンジェリン』からスピード感のある物語の巧みさと「どうにもならない人たち」の表現がうまいなと思っていたけど、今作で鮮やかな世界観とそれと相反するようなリアルな人たちを描かせたら間違いないなと実感した。
あとこれだけは言いたい。ショーン・ベイカー監督はイケメン。
公式サイト
関連記事
「それからもう1つ、早い段階で気付いたことがありまして。“撮影現場に砂糖はダメだ!”って(笑)。子どもたちが超元気になっちゃうから。実は劇中に登場するアイスクリームやグミも全てシュガーフリーなんです。」