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映画や舞台の感想書いたり、推しが大好きと叫んだり。

舞台『メサイア-月詠乃刻-』

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STORY

日本政府高官が次々と集団自殺を遂げる前代未聞の事態が発生する。
チャーチ・公安の調査により、新興宗教団体「照る日の杜」が関わっていることが明らかになる。
潜入調査に乗り出す公安五係。
時を同じくして日本の根底を揺るがすプロジェクトが動きだしたとの情報を入手する。
任務のなか、自分たちの過去に向き合いぶつかり合う御池と柚木。暴走する小暮に雛森は何を思うのか?
そして、迫り来る未曾有の危機の中、急浮上する「ミコトノリプロジェクト」の実体とは…?

そんな中、サクラとして任務に当たっていた一人の男が帰国する。
その男の名前は…加々美いつき。

MESSIAH -月詠乃刻- | STORY

REVIEW

その昔、神は人を造った。ではそのまた昔に神はどうやってできたのか。否、それは違う。神は人々が造った。何かを信じたいと願いその想いに縋った人びとが造った。そんな神がおそらくこの世界には沢山いる。八百万の神というのではない。それを求め必要だと信じるだけでいい。そうすれば誰かの「何か」になる。問題はその後なのかも知れない。その人々の想いを背負っていくには、真っ当な人間には荷が重すぎる。もしくは、背負っていくには穢れている。ただ稀に、そうして神になったものも居るだろう。私が見たのはそんな人間たちだった。 

御池万夜は求められた神だった。人々を癒やし慰め時には厳しく声を掛ける。人が迷い苦しんだ時の支えになる信仰としての神。どこかこの世を諦めているようなその態度は、仏教でいうところの諦念とでもいうのだろうか。普通の人間が成せないことを容易くして見せながらまた人のために苦しむ。それは一度死んで照日の杜から出ても変わらなかった。心の中では自分ができることの少なさを悔み無敵かのように振る舞うその姿はどうやっても変わりようがなかった。そうしてつい口走ってしまう。「殺してくれ」と。

一方で一度信仰に救われた人間は簡単には信仰心を失くさない。それは柚木小太郎も同じだった。彼は照日の杜や彼の家族に裏切られ殺されても尚、自分の信仰心のために復讐を誓っているかのように見えた。自分が信じていたものは何だったのか。あの時救われたのは間違いだったのか。どうしてこんなことになったのか。自分はこれから何を信じればいいんのか。そうやって自問自答を繰り返す柚木に一嶋はメサイアである御池を信じろといった。なんという悲劇、と誰もが思っていただろう。でもそれは単なる悲劇ではなかった。

御池には自分が思い通りにできなかった信者を与えた。

柚木には最期まで信じたかった御神体を与えた。

このどちらも彼らが生きていくには無くてはならないものだった。道標もなくただ暗闇を歩いていた御池には光が必要だった。真っ直ぐに自分がどこにいてどこに行けばよいか指し示してくれる太陽のような光が。絶対に揺るがない鋼のような想いが必要だった。そして柚木には自分自身を肯定できる意志が必要だった。自分が今こうして生きているのは間違いじゃない。一度死んだのにもきっと何か理由があるはずだ。その答えとなるような意志が必要だった。

彼らはお互いがお互いを補完するベター・ハーフそのものだった。

古代の最初の人間は、頭が二つに手足が四本づつあって、円筒状の横腹をそなえていて、現在の人間二人が背中合わせにくっついたような形で、丸いからだをしていました。男と男がくっついたもの、女と女、そして男と女の組み合わせの、三種類の人間がありました。この中で、男と女が一体となっていた人間は「アンドロギュノス」といわれていて、自惚れが強く、神々に戦いを挑もうとした人間たちでした。これに対して、ゼウスは怒って、それぞれの組み合わせのものを、2つに切り離すように決断しました。

全能の神ゼウスは、「アンドロギュノス」をまず二つに分けました。またアポロンは胸を作り、四方八方から皮を腹の真ん中へ引き寄せそこで締めくくったので臍と呼ばれているものができました。その後男と女を分ける作業をしました。もともと人間は一つのものだったのですが、二つに別れ、各々は半身に過ぎず、常に自分の半身を求める事になったのです。このようにして男達は皆女好きであり、女達も同様に男好きになり子孫を残すようになりました。

しかし、女と女、男と男の組み合わせの人間から別れたものの中には、女達は男には興味なく、女ばかりに心を寄せてものがおり、男達にも同じものがいました。同性愛者はこの名残であり、この種族から出てきます。

これにより原形を切断された人間は、失った自分の片割れに憧れ、自分のより良い半身である相手を、ベターハーフ(Better half)と呼ぶようになりました。

男と女をめぐる英単語の話:ベターハーフはなんで半分なの?/ハズバンドは家を持っている人? Jackと英語の木/ウェブリブログ

そうして彼らはこの物語の最後に一つになった。「殺してくれ」と言っていた御池が「生きなくてはならない」という言葉の重さを最も深く知っている。暗闇を歩いていた小さな神がやっとのことで太陽を見つけそして二つは溶け合う。この祝福すべきことがこんなにも苦しい。けれど、彼らはこれまでのどのメサイアたちよりも強固に繋がったのだ。

どちらが先に終わることもなく続くこともなく、ただ同じ時間を生き始めた二つの魂が舞台上に現れた時、心の中は肯定でも否定でもなくただそうあるのみなのだと思った。そして散っていく桜の中に私は確かに神を見た気がした。

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公式サイト

messiah-project.com

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