DD過ぎて中身が薄い

映画や舞台の感想書いたり、推しが大好きと叫んだり。

映画『獣道』

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STORY

とある地方都市で生まれた少女・愛衣(伊藤沙莉)はいつも母の愛に飢えていた。そんなある日、信仰ジャンキーの母親によって宗教施設に送られ7年もの間世間から隔離されて生活をすることになる。自分の居場所を探そうと教祖や信者たちと疑似家族を作り上げていく愛衣だったが教団が警察に摘発され保護されてしまう。すでに違う宗教にはまっていた母の家にも、初めて通う中学校にも居場所はなかった。愛衣は社会からドロップアウトして万引きと生活保護で生きるヤンキー一家やサラリーマン家庭などを転々として居場所を必死に探すのであった。愛衣の唯一の理解者であり、彼女に恋をする少年・亮太(須賀健太)もまた居場所を探す不良少年であった。亮太は半グレたちの世界で居場所を見つけ、愛衣は風俗の世界にまで身を落とす。やがて二人の純情は地方都市というジャングルに飲み込まれていく…。 

http://www.kemono-michi.com/story.html

REVIEW

地方都市に生まれた人間には、進学か就職しか自分の状況を見つめ直す機会がない。これが本当にそうなのだ。自分の生きている世界とテレビに映る世界はどこか別物のように感じるし、両親のように生きて死ぬものだと思っている人間が、状況を変えるのは二択。ただ、この選択に手が届く人間もごくわずかという現実はあるけれど。

【以下ネタバレ】

伊藤沙莉が演じる愛衣は、特殊な環境で生まれ育ったように思えるけれど、映画のために緩急つけただけで、ネグレクトされている子供はごまんといる。そんな愛衣が居場所を求めて、田舎町を転々とする。あくまでその小さな街の中を。彼女が初めて転がり込んだ家は、そのスタートにはふさわしかった。

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年相応には見えない兄弟たち。そこに溜まる同じようなクズたち。今にもシンナーの臭いがしてきそうな画面。彼らの雑で派手な格好に北関東民としては分かりみがすごい。特に右端のちょんまげの女の子。こんな子クラスに一人はいる。すっごいカワイイのに、たまに学校に来る姿を見るとどんどんやつれていくの。生まれとはこういうことかと幼心に思ったよ。

 

露出狂ぶりの薫平くんも中学生に見えなさではナンバーワンだし、『ダブルミンツ』ぶりの毎熊克哉さんもマジで高校生か(でもわかる)となった。個人的なヒットは川籠石駿平くん。『ダブルミンツ』からのギャップがすごい。

 怖い先輩の彼女が出てきてそそくさと街を後にするハルキくんが好きです。元カノがすぐリスカしちゃうのもツボってしまうところなんだけど、冨手麻妙ちゃんの輩の彼女感も最高。閑話休題冨手麻妙ちゃんって「まなみ」って役名多くない?

そんなこんなで、この家にもいられなくなっちゃう愛衣ちゃんが、家族の愛を探し求めるお話がお話の一つの軸にある。でもそれは決して自分で作る家族ではなく、すでにある家族に愛を求めてしまい、だからこそうまくいかないことに苦しみ、傷つき、涙する。といって自分にはそこしかない感覚に陥っている。知った風に言うけれど、これほど極まっていなくても、同じような人生を送っている人も少なくないのではと思う。

そんな愛衣ちゃんを見詰めているのが須賀健太が演じる亮太。良くも悪くも亮太は普通の人間で、だから愛衣みたいなはみ出し者や暴走族に憧れて、近くに行こうとしてみるけれど、どこか冷静な自分が常にいるような人物。ともすれば飲み込まれそうな密度の世界の中で、正気を保っている方が稀有でおかしいのだけど、そんな冷静な自分が嫌な前半。そのうちにそうするしか生きていけないのだなと気づく後半。一貫して彼は愛衣や仲間たちのことを愛そうとするのだけれど、お互いの求めているものが違って上手く噛み合わない姿が痛々しかった。特に、吉村界人の演じる佑二が「置いて行かないでくれ」と懇願するシーンが、個人的には一番堪えた。明らかに道が異なってしまった友人を快く送り出せるほど人間は強くないのだと、そう思った。

最後のシーン、観た人の賛否は二分すると思うけど私は好き。初めて会話した愛衣に無邪気に放った亮太の「(お前は)特別だ」という言葉の所為で、愛衣の人生は大きく変わったのかもしれないと思った。地元では亮太の言葉に呪われ、彼の特別で居続けた愛衣。それから上京して、ある意味どこにでもいるAV女優になった愛衣。亮太の呪いを解かれてこれからどう生きていくのか。きっと亮太の冷たい目はいつまでも愛を見つめているだろうし、愛衣も亮太に再び出会う日に一歩一歩近づいている。たぶん。