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パルコ・プロデュース『露出狂』

演劇

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www.parco-play.com

REVIEW

『露出狂』全日程終了おめでとうございます。そしてお疲れさまでした。こんなに六本木に通うとは思ってなかった~っていうのが率直な感想です。露・出・狂の全チーム数回観ましたが、これまでの女性版や2012年版のパルコプロデュースは観てません。いまさら悔しいので感想等もほとんど読んでません。なので、話の全容を知るのも露チームがハジメテでした。

そうして初めて観た時、物語が進んでいくうちに劇場の雰囲気がどんどん変わっていくことを実感した。正直、映像で観てもあの羞恥心と罪悪感をはらんだ空気感までは体感できないし、十分に楽しめないんじゃないかと思うほど。下品でくだらない単語を連発。猥語・隠語なんてお構いなし。ただ突っ込めばいいのかよっていうくらい、前に後ろに動きまくる男子高校生の歪んだ日常をドッカーンと予告なくも見せつけられて、戸惑っているうちに話はどんどん進んで、人間関係はますますこんがらがって、「もう笑うしかないね」ってなってからの突き抜け感が本当にやばい。ああ演劇って素敵だなって思いました。サッカーとかもうどうでもいいんだなって。あと、どのセリフも極論「声に出して読みたい日本語」だなって思ったので、今後使える場所と単語でチャレンジしていきたい。

部活動ってなんなんでしょうね。本当に何のために一緒に頑張るんでしょう。教育側からいえば、それこそ団体行動の訓練とか言うんでしょうけど、実際その体育会系のノリで解決できることってそんなに多くなくて、クソみたいな状況でアドレナリンが出せるようになるくらいのメリットしかないって多分どっかで気づいているから、比留みたいに他のところに意味とか見出しちゃう人も出てくるんだろうなって。露チーム千穐楽のアフタートークで、2012年の『露出狂』にも出て、今回蔵毛(露)と白峰(出)を演じた永島敬三さんが「2012年、自分は1期生の九門を演って、2期生や3期生と学年間のヒエラルキーを感じた」って言ってて、それに対して脚本・演出の中屋敷さんが「前は自分も中に入ってメンバーの一人としてチーム内の人間模様を表現したけど、今回は第三者として自分が実際に運動部をみて頭おかしいなと思ってたことを表した」って言ってたのが印象的だった。つまり、以前は各学年の繋がりが強くあって、そのうえで上から下の関係性があったけれど、今回はそうではなかった。「みんなで頑張ろう!」というチームワークが優先されていたということ。それを聞いて、学年のヒエラルキーよりも全体のチームワークを優先させるのっていかにも今っぽいと思った。でもそれが完全にはうまくいってなくて、「学年同士の結びつき」と「学年を超えたつながり」を交互に部員に要求してしまう。この二つの考え方が相反しているせいでまたややこしくなっているんじゃと思ったらまた妙に納得した。「自分たちはまとまってるつもりでも、はたから見るとバラバラだったり、一人ぼっちなひとが必ずいるというのが分かるようにした」とも中屋敷さんは言っていたけど、本当にチームワークってなんなんだろうね。トリプルコールで高天原高校の校歌を敬三さんの合いの手でほぼフルメンがステージに上がった状態で歌い、サビでは観客が\青春/と入れるさながら本当の卒業式だったけど、さすがに30人近いメンバーともなると完全にまとまることはなくて、寂しそうな人もいれば楽しそうな人もいる、まだ実感もなさそうな人もいる、というのが本当に部活動みたいだったし、これも素晴らしいチームワークではないのかねという感じだった。

もともと私はスポ根物語に興味がない。でも、スポーツをやる「前」と「後」の物語については、考えることが多かった。例えば『露出狂』で言うと、彼らがどんだけ勝ちたくて、そのために努力してるかというのはどうでもいいけど、なぜ比留がサッカーを始めたのかとか、強豪校にいたにも関わらずサッカーを続けそうな部員が一人もいないこととか、そういうことばかりぐるぐる考えて。やっぱり気持ちが入っちゃうのは比留だから、「比留がその昔いじめられっ子だった時に、庇ってくれた子がサッカーやってる子で、その子と一緒にいたいが故にサッカーを始めて、そのうちなまじセンスがあったおかげで、中学では好きだった子より上手くなってしまって、途端にその子への興味を失った」っていう高校入学前の設定まで勝手に考えました。そこまで考えると、比留の不安定なキャラクターが少しでも分かる気がして。比留は最も目まぐるしく物事が変化していく高校時代にも「変わらないもの」を持っていたかっただけで、決して関係を壊したかったわけじゃない。自分でも「壊れちゃうよ」って言ってるしね。でも、普通の人から見たら空気を壊す子が比留なんだっていう矛盾、切ない。センシティブな子は多いけど、本当に死んでしまいそうなくらい危うい人は比留しかいない。それなのに部員は誰一人そんなことに気づいてはくれない。みんな成長して大人になっていく。子供のような人間のことなんて、邪険に扱う程度で終わり。そんなもんだよね。中屋敷さんの「チームワーク幻想」へのアンチテーゼというかなんというか。正直、運動部も演劇部もここら辺の問題の大きさには大差ないと思うけど。

チーム露

このチームの大きなポイントはやっぱり鈴木勝大くんが演じる比留かな。勝大くんの比留は勝大くん自身が言っていたようにサークルクラッシャーサークラ)なので、面倒臭い女を凝縮したみたいなキャラクターでした。それでいて、彼自身は比留のメンタリティを理解してはいなくて、同性愛的なセンスはほとんど感じられないところが魅力的だったなと思う。顔色の悪そうなところとか、笑顔を作るのが苦手そうなところとか、個人的な好きポイントが高い鈴木勝大くん。千穐楽の四天王がくっついたり離れたりするシーンでは、揉みくちゃにされて、ステージから一段落とされ、「愛されてるなあ」って感じだった。

優等生っぽいイメージの市川知宏くんが熱血佐反町っていうのも面白かった。オラオラはしてないけど、硬派なヤンキーって感じ。彼女を大切にしてそう。

ちゃんじん(陳内将)の白峰のどこまでいくんだ?っていうビートたけしモノマネも見納めてしまったのが寂しい~。

個人的に応援している砂原くんの野宮、めちゃくちゃかわいかった。かわいいだけじゃなくてかなり柔軟性があって、他が結構ソースっぽい濃いめな演技の中、塩だけどめちゃくちゃからい演技っていうのが面白かった。砂原くんは一番最初に観たのが劇団番町ボーイズの公演『MY DOOR ~熱~』で、本当に他と演技の質が違ってて「なんなんだこの子...」って思ってから半年、また出会えてよかったな~。これからも期待。

aooaao.hatenablog.com

チーム出

個人的に一番楽しめたチームでした。どこを見ても楽しくて、個性が強くて全力なキャラクターがばかり。噛んでも噛みきれないジャーキーみたいな、天一くらい胸焼けするけどやめられないドロドロラーメンっていう雰囲気が好きだった。「日替わりネタ」という意識が一番あったのはこのチームなんじゃないかな。

ちゃんじんの佐反町は、まさに!という感じの熱血漢で、真剣な表情も、馬鹿面も、比留に対する冷たさもどれも自由で、役に生きてるな~と思った。大千穐楽のクライマックスシーン「この後、比留はものすごい勢いで泣きだしたから、メンドくせーから…」の佐反町の台詞でちゃんじんの目が潤んでて、言葉に詰まってて、「佐反町が…泣いたら…ダメじゃん…」って思ったけど、最後だし全部許した。(あまい)

小沢道成さんの比留はほんと怖いんだよ。葉枝の耳元で「へたっぴなお前が悪いんだよ。バーカ」っていうところとか特に。四天王に対しては「縛りつけておきたい」「この場所から抜け出すのは許せない」っていう思いが強くって。前述したように、比留は最も多感で移ろいやすいと言ってもいい10代後半の男子に、「ずっと一緒」を望んでいるから、白峰の言うように「ばらばらになるためにひとつになった」とかそれなりに賢いから本当は全部分かってんだけど、理解したくないっていう確信犯的な感じ。小沢さんのツイッターからも、「この青春を留めたい」っていう気持ちがどことなく伝わってくるな〜と思って見てました。

敬三さんの白峰は始終ぶっ飛んでた。大人組とは思えないくらいに。それを止めに入る陳内佐反町は大変そうなんだけど、最終的には一緒にふざけるのが楽しいって感じだった。こちらも千穐楽の公演では四天王シーンで眼鏡外されたりとか、まあ主にちゃんじんが仕掛けるんだけど。

市川くんの御器はわかりまくりだった。はめられて生徒会長になりそう。

高良亘くんの蔵毛は金髪具合とはっちゃけ方がABC-Zの塚ちゃんに見えて仕方なかったけど、その感じがまさに蔵毛って感じで。オカマではないけど女性的っな感性を持ったパン屋さんになりそうだなと思った。きっとおいしいクロワッサンを作ってくれることでしょう。

千穐楽での佐藤信長くんが演じる氏川の切れ味が鋭過ぎて、葉枝ともども観客もぶった切ってた。あくまで推測だけど、狂チームの比留を経て、度合いの匙加減がぶっ壊れたというか、「緩急の差さえあればいけるんじゃねえの?」というくらいに手加減がなくなってた。自分の気持ちに真っ直ぐな比留と、流れに身を任せて楽な方に進んでいくことができる氏川をやったっていうのは、初舞台にしてはめちゃくちゃ成長できたんじゃないかなって部外者ながら思ってます。

坂口くんの野宮は流石だ〜ってなったし、逆にあの個性があと3人でもいたら胸焼けするので、いい塩梅過ぎると思った。

あとは何と言っても、羽生役の松井勇歩。日替わりの概念を明確にしていた(というか口に出していた)張本人。好きな俳優であるというのもあるけど、お笑いの素養を自ら高めている人なので瞬間的なボケとか間、観客の反応によって自分を対応させているのがダントツ上手かった。香森役のケイン鈴木くんとの絡みもっと見ていたかった。永遠い続くと思ってたのに終わってしまった。ボケがウケた時とか、拍手もらえた時とか、本当に嬉しそうで私だって嬉しいよって思ったし、冥利に尽きるよ~。ホストちゃんも頑張ってほしい。名が売れることは素晴らしいことです。

チーム狂

aooaao.hatenablog.com

 本当に若かった「チーム狂」。どこまでも純粋で真っ直ぐな高天原高校サッカー部の卒業を見届けてきた。あの狂メンバーで露出狂をやっていたことがすでに奇跡のように思える。どのチームもそうだけど、この作品が出演者と観客にとって二度と繰り返すことができない思い出になったんじゃないかと僭越ながら思ったりした。下ネタを多用したボケを言うたびひやひやしてしまったけど、3回の公演を経て強心臓を手に入れていたようだ。特に白峰。しゅごい。狂チームを見て思ったのだけど、高校生に近ければ近いほどあの異様な空気感が生まれるかというとそうではなくて、むしろ「演じている」雰囲気が強かったな~と思う。

このチームを引っ張っていたのは佐反町を演じた赤楚衛二くん。露チームで葉枝という中心に近いメンバーだったからか慣れていて、役も役だけにその熱でチームを引っ張っていた。若干力んでいる感じもあったけど、それさえも佐反町っぽいなって。若さと勢いゆえに「彼女がいてもカラオケミーティングOK」っていうノリの良さと、後先考えてなさが清々しくて、あわせて背負ってるものをビシバシ感じてつられて感極まった。カテコの涙忘れない。

チーム出で氏川を演じた信長くんが狂では比留で、ゆらゆらと不安定な雰囲気を纏って登場したり、端っこに体育座りしてる姿はもうまさに比留で。この比留は嬉々としてチームを壊している感じさえした。パーカー羽織ってる信長くんかわいかったよ~。たまに廣瀬智紀くんに見えて「うわ~」ってなった。

前々から映像で見て気になっていた中山龍也くん、全く緊張していないらしくもう本当にのびのびとやっていて、千秋楽だからか御器の「勝ちたい、とにかく勝ちたい、とにかく勝てるだけ勝ちたい」っていうのやり始めちゃったのすごかった。彼は香森です。

真今井の三原くんが「狂チームの千秋楽が終わったら、メンバーひとりひとりとハグする」ってステージ上で宣言してたので、あとでもいいので動画でください…後生だから…。

公演前から髙橋里恩くんが気になっていて、彼の演じる蔵毛を楽しみにしてたんだけど、初舞台とは思えぬ堂々たる演技だった。あの瞬発力…恐るべし…。というか、彼の演技が柿喰う客の作品とマッチしてた。骨格が良くて、長髪だから玉置玲央さんの雰囲気があるなという感じ。かっこいいのに美しくて、男らしいのに可愛らしいっていうまさに性癖な感じだった。髙橋里恩くんの次回公演見たいです(決まってすらいない)。あと、鈍牛倶楽部を箱推ししたい。

という感じで書いても書いてもなかなか尽きない。今回の『露出狂』のキャスティングが出て、稽古が始まって、公演が始まって、いったい何のために今このメンバーで、この劇場で、この作品をするのだろうと私なりに考えていた。そもそものキャストの数が多い割に舞台初の人が多くて、いわゆる全通するようなファン層はそこまで厚くない。あわせて、作品的に誰もが好む内容ではないから、友達を誘っていくのも簡単ではない。だから、人を呼ぶことに狙いがあるように思えなかった。そうやって消去法で考えていくうちに、もしかしてこれは中屋敷さんの好きな人、一緒に仕事をしたい人、今後演劇を盛り上げてくれそうな人と「チームワーク」をテーマとしたこの作品を一緒に作り上げていって、完成を見届けたらお別れするということに重点が置かれてるんじゃないかと思った。私は業界に詳しいわけでもなければ、憂いているわけでも、喜んでいるわけでもないけど、力を発揮できると見込まれた人が、それなりの規模感の劇場で、演劇ができるのはそうそうない素晴らしい機会だと思う。経験すること自体が『露出狂』の魅力である気がする。だから、私も見ていて「楽しそう~やってみたい~!」と軽率に考えたりしたら、こんなブログが投下されてた。私に言えることはもうない。

 

ameblo.jp

最後に中屋敷さんが放った言葉。
「バラバラになるためにひとつになったんです。
今後僕がオファーしたら断ってください。
売れて忙しいと断ってください。
出演させてくださいって言ってきても断る
それぐらい僕も売れます。
みんなも売れてください。
だからお前らとはもう二度と会わねぇ。
そう思ってる奴らだけが上に進めるんです。
上でまた会えるチャンスを手にできるんです。」 

 

【公演日】程2016年9月30日(金)~2016年10月10日(月・祝)

【会場】Zeppブルーシアター六本木

【作・演出】中屋敷法仁

【出演】

市川知宏陳内将、小沢道成、永島敬三/小野一貴、川合諒、ケイン鈴木、高良亘、紺野真、坂口涼太郎、渋谷謙人、鈴木勝大、砂原健佑、田中穂先、畠山遼、松井薫平、松井勇歩、見雪太亮/赤楚衛ニ、石賀和輝、井藤瞬、小松直樹、佐藤信長、三原大樹/井澤巧麻、池本啓太、菊池修司、鈴木翔吾、髙橋里恩、中山龍也、飛葉大樹、三永武明