取り留めもない

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舞台『刀剣乱舞』

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STORY

西暦2205年。
歴史改変を目論む「 歴史修正主義者れきししゅうせいしゅぎしゃ」が過去への攻撃を開始した。
対峙する時の政府は歴史の守りとして「 審神者さにわ」なる者を過去へと派遣する。

物の心を 励起れいきする審神者の力によって生み出された、
刀剣に宿りし付喪神「 刀剣男士とうけんだんし」たちは、審神者と共に歴史を守る戦いへと身を投じる。

ある日、彼らの本丸に新しい刀剣男士が顕現する。

不動行光──戦国武将・織田信長が佩用し、彼に仕えた近習・森蘭丸へと授けられることとなる一振りである。

不動行光は信長の愛刀であったことの誇りを顕わにするが、
同じく信長を元主とする宗三左文字、へし切長谷部、薬研藤四郎らとうまく噛み合わない。

近侍に任命された山姥切国広は、不動行光の参入により和の乱れた本丸を立て直そうと奔走する。

そのさなか、審神者より天正十年──織田信長が果てた歴史的事件「本能寺の変」へ出陣の命が下だるのだった。

舞台『刀剣乱舞』~ 2016年5月東京・大阪公演決定! - 刀ステ

 REVIEW

なんていうかすごいものを観たなという感じだった。

キャストが出たときから話題ではあったけど、いわゆる若手俳優界隈で人気の高い俳優たちが、末満健一さんの脚本演出で観られるという、一石二鳥ならぬ十二鳥(刀剣男士の数)くらいの感じ。とにかく、このタイミングで、この作品(ゲームだけど)をこの俳優たちを使ってこの演出でやるとこうなるのか、納得みたいな。どれも人気がある理由分かる〜っていう。安定感ありすぎ(良くも悪くも)だった。

ゲーム未プレイ、キャラクターもミリしら、歴史については真田幸村とかぶってくるからギリセーフな状態というなんともチャレンジングなステイタスだったんだけど、そこは問題なかったかな。ゲームキャラとどれだけ似てるかとか当然わからなかったけど、自然と2次元を観ているつもりで観てた。今までも漫画原作の作品をいくつか観てきたけど、ここまでキャラクターありきな作品はなかったから単純にそう思ったんだと思う。ちなみにアニメとかゲームとかほとんど観ないしやらないのであのノリに追いついていくまでに結構時間がかかった。

SNSでは「刀剣たちの織田信長という人物に対する解釈違いで起きた戦争」って言われてるけど、言い得て妙。でもそう言ってしまってはつまらないと思わないこともない。そもそも「刀剣乱舞」の歴史の修正主義者とそれを阻止しようとする審神者と刀剣たちの戦いっていう設定に感心してしまって、それを踏まえて物語を作って、歴史上の人物の人柄というか歴史そのものの危うさを問うてくる末満さんすごいなって思った。自分(主体)に対してどんな人物かということや、自分がどう理解しているかということがすべてなわけで、そうしてその対象となる人物が形作られていくにすぎないから、それが他の人と同じであるとは限らない。むしろ違う方が多いけど、それって面白いよねというようなことかなぁと。それに時間軸に対する物語の動きが加わって、みんなの想いが混ざり合って初めのうちはカオスなんだけど、最終的には事実は変わらないということにひとつの残酷さがあるというか。決して万々歳にならないし、これからもある程度の後悔を抱えたままというところが、昨年劇団Patchが上演した『幽悲伝』のラストとシンクロするなあと思った。あとは、キャスパレとか台詞のひとつとっても、演出家の味って出てくるよなという話。自分の思い描く未来や世界や人たちのために突き進んでしまうことははたして悪なのか。もはや、そんなことができてしまう状況のせいなんじゃないかと設定懐疑主義者は思います。

CHARACTER

三日月宗近(鈴木拡樹)は主役ではないのよね。それこそ東軍の大将(仮)というかそんな感じ。そうかこれが鈴木拡樹の真骨頂、そうか。個人的には最後まで心の読めないところがキャラクターとして消化しきれなかったかなぁ。どうしても私の目には2次元だったんだよなあ。アドリブのところまで作りこまれているというか三日月宗近という役でやりきっていたように感じた。

山姥切国広(荒牧慶彦)は「おはぎの宴(´・ω・`)」という言葉で私たちの心を奪っていきました。始終ツンな役だからギャップで可愛かった。なにあの生き物。最終的には軍議はまんばちゃんを笑わせるためにあるんだなって思った。

織田信長のひとつ宗三左文字(佐々木喜英)は率直に末満さんのおきに入りっぽい。宗三左文字のようにキャラクターに業を背負わせたら末満さんの右に出るものはいないんじゃない。それまで刀としての真価を見せることはほとんどなく、時の長たちに所有されるだけだった宗三左文字が、自分の力で「自分の信じる織田信長」を守るために戦っていたのが本当に美しかった。ところで全然関係ないけど「侍る」って言葉を使っている宗三左文字を見ながら日本語って素晴らしいなと感じ入っていたのは私です。

一方で純粋に信長に死んでほしくないと歴史に抗った不動行光(椎名鯛造)も愛おしく、これだけ2次元らしい世界で人間の熱があることが良いことだと感じられるキャラクターもそうそうないなと思った。基本的に歴史を守らなきゃいけないなんていう理解できそうでできないある種の取り決めの拘束力が、愛するものを守りたいという本能的な気持ちに勝てるわけないのにね。でも、えらいね不動行光。このショタっ子に甘酒買ってあげたい。

同じく織田信長の刀だった薬研藤四郎(北村諒)やへし切長谷部(和田雅成)の元主への想いももう少し掘り下げて観たかったなと思う。まぁ12人も刀剣男士いるから無理なのは分かってるんだけど。薬研藤四郎のショーパンには二拝二拍手一拝しても余りあるありがたみを感じた。

江雪左文字(輝馬)にも良い意味で人間っぽさが感じられず、ゲームを経てないせいなのか「あの板の上に居たのは本物の江雪左文字」って今でも信じてる。

小夜左文字(納谷健)に限っては、中の人にも思い入れがあるので、こういう形でこの作品に出演するところが見られてよかったなぁと思う。小夜ちゃんは復讐のために生きているから、それ以外の時間を持て余しちゃうところが本当にかわいくてかわいくて。そんな役を納谷くんが、あのメンバーの中でやりきったということに面倒くさいオタクは意味を感じちゃうし、もっともっと知られてほしいよ~!ライビュだったんですけど私の周りでも納谷くんかわいいって言ってる人が多くて、でもカーテンコールの時に「劇団Patchで~」のくだりで反応薄かったのでまだまだこれからだよ。

燭台切光忠(東啓介)も納谷くん同様ワタナベ勢として中の人注目枠だったけど、とんちゃん本当に声が良い。そしてVERYVERYスパダリ。それが一周して、ただ喋ってるだけで面白いってどういうことなの。いや、でもあの骨格の人の繰り出す殺陣の美しさは半端なくて本当に「太刀」って感じだった。なんなのこの感想。

鶴丸国永(染谷俊之)は中の人と2次元のキャラクターのバランスが良いなと思った。アドリブも多そうな役だからそういう風に思ったのかもしれないけど、今度は何をしてくるんだろうと思って観てて一番ワクワクした。面白くてかっこいいって最強じゃん。

一期一振(廣瀬大介)と鯰尾藤四郎(杉江大志)に関しては割と「もったいないなぁ」と思った。キャラクター的に他に比べると物語への関わり度が低くて、見えない物語上のヒエラルキーをなんとなく感じたというか、頑張りどころがない人にはない空気感があった。つまり、輝きどころが得にくく難しいというか。途中それに気づいてしまってから結構なダメージが心にあるのを知って「自分そんなに廣瀬くんのことが好きだったの?!?!」ってなって、着替えてからのカテコの時にマイクがなくて~のくだりも、鶴丸さんとの萌えよりも、「大千穐楽に思いのたけを話せないのはつらいよな。凹んでいるのか具合が悪いのか悲しいのか分からんけど、わたしが悲しい」ってなってな…さいごまでみてらんなかった…。

MVPはまさかの森蘭丸(丸目聖人)です。なんかもうずっと可愛かった。そんでもって同じ未来を夢見る不動と対峙してしまうところは海外のライビュを含めた皆が泣くところだよね、うん。私生まれてこの方こんなにも蘭丸のこと愛おしいと思ったことないよ。(戦国鍋はかじった程度)乙女ゲームだったら刀剣男士たちに総愛され主人公でもおかしくない(?)

 

今回いわゆる2.5次元舞台のど真ん中を観て、その面白さも、まだ楽しみあぐねる部分も感じられたなと思う。基本的に原作をちゃんと知っておいた方がその場で基本的なことを咀嚼する必要がない分、舞台らしい演出が楽しめるんだろうなぁ。どっちにしても、そんなに観ることもないだろうと思うので良い経験でした。物語とかもうちょっと考えてからまた書きたい。おしまい。