取り留めもない

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映画『太陽』

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STORY

ウイルスの感染を克服し心身ともに進化したけれど、それと引き換えに太陽の下では生きられない体質になってしまった新人類【ノクス(夜に生きる存在)】。もう一方は、太陽の下で自由に生きられるものの、ノクスに管理されることで貧困を強いられている旧人類【キュリオ(骨董的存在)】。キュリオからノクスへ転換は可能だが、ノクスへの転換は医学的に20歳までの若者に限られていた。ある日、とある寒村でノクス駐在員がキュリオに惨殺される事件が起こる。その結果、村はノクスによる経済封鎖を受けてより一層貧しくなり、転換のチャンスも奪われてしまうのだった。

時は流れ、10年後。キュリオとして生きる青年・奥寺鉄彦(神木隆之介)は、村での生活に憤りを感じながら鬱屈とした日々を送っていた。彼の幼なじみの生田結(門脇麦)は、自分と父親を捨ててノクスへと転換した母親(森口瑤子)とノクスそのものを憎みながらも村の生活を少しでも良くしようと前向きに暮らしていた。そして、ノクスに憧れる鉄彦とノクスを憎む結の運命を大きく変える出来事が起きる。それは10年ぶりにノクスによる経済封鎖が解かれることだった。太陽を回避して生きるノクスの世界と、太陽のもとで生きるキュリオの世界。2つの世界を隔てていたゲートが開き、そこに門衛としてノクスの駐在員・森繁(古川雄輝)がやって来る。ノクスに憧れる鉄彦は何かと森繁の元を訪れ、いつしか2人の間には友情が芽生え始めていた。また、キュリオからノクスへの転換手術の応募も始まった。真っ先に転換の応募をした鉄彦は、まもなく自分にやって来る明るい未来を夢みていたが、選ばれたのは、なんと結だった。結の父・草一(古舘寬治)が本人に無断で応募していたのだ。ショックを隠せずに荒れ狂う鉄彦と望まない転換に戸惑う結。

そんな矢先、10年前の事件を起こして逃亡していた鉄彦の叔父・克哉(村上淳)が村に戻ってくる。相変わらず傍若無人に振る舞う克哉の登場によって村はふたたび不穏な空気に包まれる。ノクスとキュリオは共に手を取り合いながら生きることはできないのか、2つの世界の隔たりを消すことはできないのか。
新しい未来のために、それぞれが自分の意思で生きようと決意したとき、世界はこれまでと違う方向へと動き出したかのように見えた─。

映画『太陽』公式サイト 2016年4月23日、「沁みる」ロードショー

REVIEW

好きなジャンルには偏りがあると定評のブログ主ですが、そもそもSFも興味がないながらイキウメという劇団の戯曲がもとになっていると知ったことがきっかけで観てきました。舞台の映画化作品で二度目の出会いの古川雄輝くんは今日も今日とて痛そうでした。以下ネタバレ。

この作品の山場といえばやっぱり結が兄と慕っていた青年にレイプされ、村をめちゃくちゃにした克哉が帰ってきて、村人は克哉を殺そうと血眼になっている中、鉄彦の母は死ぬし、森繁は太陽に焼かれそうになっているということが同時進行されている混沌状態のシーン。結を演じる門脇麦ちゃんが眼前の光景に眩暈を感じるように柱の周りをくるりとまわったり、ふらふらと家の外に出ていく姿なんて余りにも常軌を逸していて自然の拒否反応のせいで笑えてしまうほど。神木くんが確かに主役だったけれど、実質の主役は麦ちゃんかな。

ノクスになることを一心に願っていた鉄彦と、キュリオとして自分たちの生活を良くしようと頑張っていた結は、いつの間にか太陽に愛された鉄彦と太陽を捨てた結の構図になった。鉄彦はキュリオでいたいというよりも、いろんな事情があってノクスになることを諦めた様子で、結は何より「生きたい」という気持ちが彼女を強く突き動かしたんじゃないかなと思う。観ていて途中で克哉があの世界を変えるきっかけになるのではと思いもしたけど、そこに映画らしい予定調和はない。勧善懲悪といったらそうなのかもしれないけれど、善(ノクス)が全く善に見えないからすごい。キュリオが幸せとは言えないけど、ノクスはかわいそうな本性をペンキで塗りたくっている感じがして気持ちが悪い。最後の展開もその後の跳躍が予想できるわけでもなく、今できることをやろうというだけ。それでいいし、それ以上を望むのは無理な話なのかもしれない。

登場人物はそれぞれ汚い部分を存分に晒していてよかった。特に拓海(水田航生)は出てきた瞬間から嫌な感じがしたけど、本当に下衆かった。ノクスの理性の世界と対比させると、キュリオの世界は本能の世界。自然に近いといえばそうだし、野蛮なのかもしれないけれど、感情や熱があるという意味ではとても人間的に感じる。同様に、克哉(村上淳)についても、言動はさっぱり理解できないけど、人間の世界であるからこそああいう人が出現するんだろうから仕方ないなとも思う。ノクスの世界の人たちがあまり魅力的に感じられないというのがこの作品のポイントかもしれない。現に、ノクスの手術を受けた結を観ていると哀しくなってくる。はやくお帰りくださいの気持ち。

それにしても、こういう作品を観ていると「よくそんな設定思いついたな~」って考えちゃうのやめた方がいい TO 自分。

 

5月から始まる舞台『太陽』の概要は下記。 

www.ikiume.jp