取り留めもない

映画や舞台の感想書いたり、たまに日記も

衣裳芸術体験

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その昔、と言っても3年くらい前だけれど人生の割りと大事な岐路に立った。その時にふと家にあったこの本を読み返して「こういう本を編む人になりたい」と思った。でも結局、その場所への道を模索するところまでいったけれど、自分からその扉を閉めてしまった。後悔してるかと聞かれたらしてるかもしれないと答えたいけど、でも本当は自分はその世界にいられない人間なんだろうなということも分かっているので、こうなるしかなかったのだと諦めている。

話を戻して、『衣裳術』はスタイリストの北村道子さんが映画の衣裳を担当した時の作品(服)写真やその当時のことを語っているいわゆるエッセー。どうしてその道を歩んできたのかとか、今後はどうしたいだとかそういう私が素直に憧れる女性の生き方の一部がそこにある。三池崇史監督の『スキヤキ・ウエスタンジャンゴ』や『46億年の恋』を通じて北村さんの衣裳に出会って、感動して、逆にこの本で北村さんが衣裳を担当していた塚本晋也監督の『双生児』や黒澤清監督の『アカルイミライ』を観た。そして見る度、衣裳だけでこんなに力があるのかといつも驚かされた。一見しただけではっとするというか目を惹かれるというか、本当なら作品の雰囲気とは馴染まない違和感さえ感じることもある。時に服はいらないと黄色い布を役者に纏わせるだけのこともあるのだ。でも、なぜかある種とても自然で、その自然さが不自然なほど。この人が考えた服を着られる人たちは幸せで、本当に羨ましいと思う。服に魔法をかける人なのだ。

最近はさっぱり映画衣裳のお仕事はしてないみたいでとても寂しい。ドラマだとNHKの『ロンググッドバイ』。監督でも脚本家でもないのに、北村さんが参加した作品には統一性を感じるということが本当にすごい。こういう人がちゃんと考えて作った服を着て、ちゃんと考えて作られた世界の中で、ちゃんと作った役者がお芝居をする。全部偽物。でもそれこそが私の求めているものなんだと思う。

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衣裳術

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