取り留めもない

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映画『いいにおいのする映画』

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www.youtube.com

STORY

「魔法使いになりたい。」―――光遊びが好きな少女・レイは、久しぶりに帰って来た幼馴染のカイトに再会する。カイトはVampilliaメンバーとライブハウス付きの家に住み込み、作曲やPA、照明を手がけていた。明くる日、ライブを訪れたレイはライブハウスの照明に心をときめかせ、Vampilliaに懇願し、照明技師を目指そうとするのであった。そんなある日のライブ後、ふとしたきっかけでレイの血を見たカイトのとある病気が勃発。戸惑いながらもそれを受け入れるレイと禁断の恋の日々が始まった・・・。 

映画『いいにおいのする映画』公式サイト

REVIEW

 分かりやすく誰かの自意識の煮詰まったものを見詰めて、あわよくばその世界に飛び込めたらと思って観に行ってきました。よくある邦画インディの、青臭い、泥臭い、ヒリヒリするといった雰囲気とは少し距離を置いて、限られた予算と人と物の中で「ダークファンタジー」と感じるものを見せてもらったという感じ。そう思えたひとつは、透けて見える監督の趣味というか嗜好性のお陰で、もうひとつは、役者たちの存在感というか個性豊かなビジュアルの勝利といったところでしょうか。

 つまらない言い方をすれば「人間とヴァンパイアの恋物語」で終わりなのですが、例えば、学校裏で煙草を吸っている幼馴染と再会するとか、鍵穴ごしに煙草の火を分けあうとか、内容よりも何を表現したいのかというところに重点がおかれた作品なんだろうなと思いました。もともとが音楽と映像の融合ということを目的としたプロジェクトのようなので、WWWでロケやってることへの妙なお洒落感が狙いすぎではと思ったけれど、古めかしい洋館*1やあの登場人物たちをもって素敵な画を撮ろうと徹底していたのは、とても好みです。シナモンの香りがしそうなファンタジックな世界観を邦画で見せてくれることはそうそうないのでこの路線は三年に一回くらいは続けてほしいです。あと、監督が演劇を見るのが好きだと*2いうのは映像を見ててもわかるなあと。なんだろう、奥底から沸き起こるサブカル臭のせいかな。演劇の脚本を書いてほしいなとも思いました。

CAST

 気になる役者さんが出演していることもこの映画を観ようと思ったきっかけでした。目当ては吉村界人(よしむら かいと)さんでしたが、良くも悪くも案外想定内だったなという印象です。『百円の恋』や『スタボロ』にも出てたんですね、そういえばという感じです。余談ですが、30分に一回は「松本大洋の描くヤンキーみたいな顔だ」と思って見てました。同じ線上には千原ジュニアがいます。

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まったくもって誰のせいでもないのですが、彼のパンフレットへのコメントやSNSの発言と写真を見ていると、その若い青さに少しだけ顔を伏せたくなってしまうので、ちょっと距離を置こうと思います。ほどよくね。

 公式サイトを見た時点で薄々気がついてはいたのですが、主役の金子理江さんはアイドルなのですね。当然かわいいです。歌うべきところで歌を歌うのですが、とても上手いしこの子の声すごく好きでした。サントラ買ったので聴き倒したい。

  あとはなんといってもVampilliaというバンドの方々。サーカスのような、見世物小屋のような、昨年の頭に武蔵野館で観た『凍蝶図鑑』に出てきそうな人たちでした。それでちょっとググったらBiSと対談してて「いかにも~」と思ってしまいました。そのまま過ぎるだろ。

www.billboard-japan.com

特にミッチーさん(ギターとMCを担当)はこの人自体の飛び道具具合が一周回って、一番この作品の世界観に合っているという奇跡が起きていました。すごい。ついでに言うとバンドのプロフィールみてみたら、G-DRAGONとプロディジーが好きなんですってよ。どこの俺。

MUSIC

『MOOSIC LAB』は2012年頃から始まった新進気鋭の映画監督とアーティストの掛け合わせによる映画制作企画を具現化する音楽×映画プロジェクトであり、それらをコンペ形式・対バン形式で上映する異色の映画祭です。(+招待作品や関連のライブイベントも多数)また、東京での開催に留まらず、10カ所以上にのぼる地方上映や都内ムーブオーバー上映や関連のライブイベントなども敢行。映画祭開催後も参加監督やアーティストの次なるステージへの飛躍、進化を後押しし続ける新しいスタイルの映画祭です!

MOOSIC LAB official site

 上記イベントでグランプリ他6冠を獲得した今作。別に何も関係ないはずだけど、映画を見ながらずっと頭の方隙にいた根本宗子も参加してたって、これは業だよ。もはや。話を戻して、音楽×映画のベストマッチかと聞かれると答えに窮するというか、Vampilliaさんがすごかったというところは往々にしてあるかなと。映画の中での音楽の使い方がピカイチだなと思うのはやっぱり豊田利晃監督。『青い春』でのミッシェルはもちろん良いけど、『蘇りの血』のTWIN TAILが最高です。最近だと『SLUM-POLIS』は卒業制作なんて信じられないほど秀作でした。

 

ある程度見る人は限られるけど、そのハードルを越えればいろいろ発見出来て面白かったです。でも、結構心に余裕がないと寄り添いきれなくてつらいかもなあというのが本音です。

 

スタッフ

監督・脚本: 酒井麻衣
音楽・劇中歌: Vampillia
企画: 直井卓俊
撮影: 伊集守忠
照明: 小川大介
録音: 上條慎太郎
美術: 成尾美奈
VFX: 白井慧
効果: 堀修生
劇中イラスト: micci the mistake
衣装: 小野寺亮
ヘアメイク: 石津智美 / AOKI
助監督: 向悠一
ラインプロデューサー: 長井龍
スチール: 飯田えりか
CAMPFIRE運営: 佐々木花

 

キャスト

金子理江
吉村界人
micci the mistake
possession mongoloid
Velladon
真部デトックス脩一
山本さん
rei miyaoto
吉田達也
竜巻太郎
メカゴリラ
Sebastian
blood type X birth date X hobby
中嶋春陽

*1:ここはグリーン・ウッド~青春男子寮日誌~』の緑林館かと思った

*2:トークショーには劇団ロロの三浦さんが来ていた、ちなみに監督は体調不良で欠席