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Dステ『アメリカ』

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STORY

 築30年ほどのボロアパートの一室を舞台にした過去と現在の物語。劇団の公演を目前に控えた弟の部屋には、いつものように仲間が集まっていた。台本の執筆は一行に進まず、息詰まる空気を打ち破る事ができない。一方現在、兄は弟が姿を消したその部屋に遺品整理のために訪れていた。兄と弟…隔てられた2人の気持ちが交差することはあるのだろうか?

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REVIEW

 昨日『オーファンズ』を見て思い出したのでメモ的に。Dステもいろいろ試行錯誤していますが、良く言えばジャンル問わず、悪く言えば雑多なチョイスだなと思います。特にこの『アメリカ』は何気ない日常から、一人の人がいなくなって、何も変わらない風を装うんだけど、実際はみんなの心に大きな穴が空いているということを一つのシチュエーションで見せる会話劇。たかがお弁当の輪ゴムのくだりでこんなに苦しいと思ったことはありませんでした。兄弟の話かって言われたら厳密にはそうじゃないと思う。何かをなくした人たちが、なくしたことに気が付く話。当たり前が、当たり前じゃないと知る話。生きているものたちしか過去は振り返れないから、結局は「交差することのない気持ち」を慮る話なのだとそう感じた。きっと、これから生存者たちがいなくなった彼に物語を与え、夢のようだと語り合うのだろう。それは一つの「喪失」の乗り越え方。そのためにはまず泣くことが重要だった。そんな最後がとても印象的だった。

 演技に対しては柳下大と客演以外はちょっと違和感があった。荒木さんって何よりもまずその顔の綺麗さが目立つから、平凡でくたびれてる役があまり似合わないのか始終「演じている」感があったし、加治さんは空回りしがちなキャラクターではあるけど声を張り上げすぎに思えた。あと、鈴木裕樹は多分あんな人普通に生きてたら成立しないんじゃないかっていうくらい感情の遷移に納得性がなくて若干サイコっぽい。まぁでも、すべて若かったからということにしておきましょう。

 余談

 私にも「残されたもの」としての記憶がいくつかあって、でも大小合わせてせいぜい3つくらい。一番大きいのは、全部の関係者と間接的に自分とつながっている夢みたいな事件。関係あるというには薄いけど、その関係性を全部をかき集めると自分のせいなんじゃないか、もしくは自分だったら止められたんじゃないかと思うような出来事。とはいえやっぱり後悔するような非はどこにも感じなくて、いまでもずっとぐるぐるしている。起きてしまったことの大きさに酔っているところもなくはないし、私だってその出来事を頭の中で再構築して咀嚼している。それだって演劇にできるかもしれない。私にそんな才能があったらの話だけれど。