取り留めもない

映画や舞台の感想書いたり、たまに日記も

#私を構成する9冊(本)

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オカルトとサスペンスしかほぼ読まない私の面倒臭さが顕著なセレクション。その中で石田衣良が一番柔らかい。他の人と違わずドラマから『池袋ウエストゲートパーク』にハマりました。あのキャラ立ちの良さは薄い本と相性良いのも頷けますね。ドラマ見てから読むとドラマの全体的に薄く感じなくもないですが、時事的な問題を絡めて多くの人に読みやすく書いているところから察するに、石田衣良的社会問題への論評な感じがしてます。中学〜高校あたりで読むと池袋への憧れがすくすく育ち、かくいう私も4年間池袋で働くこととなりました。

『東京ゲンジ物語』はそんなに有名な本じゃないかもしれません。内容的には乙一の『GOTH』を想像してください。作者の天樹征丸は『金田一少年の事件簿』の原作者でもあります。さまざまなフェティシズムを詰め込んでいて、私がオカルティックな世界観に惹かれるきっかけになりました。

私の周りには女流作家が嫌いな人が一定数いるのですが、桐野夏生とか田口ランディとかおぞましいとか電波っぽいとかいう言葉が似合いそうな作家は好きです。倉橋由美子服部まゆみ皆川博子幻想文学作家はもっと好きです。そして、桜庭一樹は可哀想な人達を書かせると優勝だと思っています。『少女七竈と七人の可愛そうな大人』は一人の美しい少女が同じく美しい少年と限りなく清廉な関係を築いていく様、そしてその終わりを描いていきます。なんといっても物語の終わりがただただつらいこと。死ぬとか辱めを受けるとかそういうことでなく、とても現実的な終わりであるからこそくるものがあるし、受け入れるしかないと思わせる。初めて読んだ時、「物語なのに夢を見せてくれないのだな」と幼心に思いました。

小島てるみはそんなに小説を書いていないので、あまり知られていない人だと思います。『ヘルマフロディテの体温』はギリシャ神話をベースとした寓話。ラブストーリーと言ってもいいと思いますが、内容のいかんよりも文章の美しさがとても好みでず暇さえあれば読んでいた時もあります。小学生の頃、昼休みには一人でギリシャ神話を読んでいた者としては、「素敵な二次創作」でした。

谷崎潤一郎は永遠のマイアイドルですが、その中でどれか一つとあげるとしたら国書刊行会の日本幻想文学集成『谷崎潤一郎』。谷崎も文章の美しさを読ませるみたいなことろがあって、特に大正時代にはほとんど内容のない私小説的な短編の幻想文学ばかり書いていました。その事態に書かれた『天鵞絨の夢』が読めるのは全集かこの集成かだったと思います。この物語は連載物として書き始めたのに、途中でやめてしまったところが悔やまれてならない。小説を読んでいるのに、映像で現前する感覚がある。好きすぎてノートに書き写したり、卒論まで書いたり、はやくみんなが青空文庫で読めるようにならないかなと願うばかりです。

高原英理『ゴシックスピリット』は人生のバイブルです。なんでゴシックについて語られた本が人生のバイブルになるんだって話になると思いますが、まさにゴシックを愛する人たちの精神というか心持ちが、明文化されていることへの感動と、厳格な信仰のようなものが詰め込まれていてバイブルというほかない。どうせするならここまでしてくれという感じです。

岩井志麻子はその文章が本人同様、腐臭がしそうな表現で埋め尽くされているせいで吐き気がしそうになるのがたまらない。おぞましいものと綺麗なものは同じ器に入れると、相乗効果でカタルシスを感じられると気づいたのは『ぼっけえ、きょうてえ』です。

平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』は岩井志麻子的なホラーとハードボイルドチックなお話と、非現実的なコメディが詰まった短編集。実話ホラーで稼いで、書きたい話はハルキ文庫で出すという商業作家のあるべき姿を学びました。

最後の安部公房『笑う月』は安部公房が見た夢をコラージュにしたり文章にしたものをまとめたエッセイ。才能ある人は夢から違うんだなあと思い知らされました。

以上。気力があれば、あと漫画と映画のエントリも書きます。